第4話 油断禁物

 行住坐臥、油断は禁物だと常々思う。油断をしたがために怪我をする。モノを無くす。我を見失う。道に迷う。目的のモノを買わず、要らないものを買う。挙句の果て、その要らないモノは何故か家にある。


 油断の塊、南山之寿です。暑さでどこか、思考回路が緩んでいる気がします。先日、甥っ子と戯れた時の油断。この南山之寿、不覚をとりました。


 甥っ子はまだまだおチビちゃん。かわいい盛り。私が実家に帰省した際、甥っ子もおりました。テレビを前に胡座を組んでいた時のこと。後ろから、トタトタと走ってくる足音を耳にした。


「おいちゃん! おんぶ!」


 胡座状態の私にダイブ。後頭部に衝撃が走る。頭が当たった様だ。気にも止めず、次の動作に移る甥っ子。両腕を私の首に回す。ガッチリとホールド。少し苦しいきつめな感じ。かわいいじゃないか、甥っ子よ。と思った次の瞬間。全体重をかけ、後ろに倒れる。ホールドされた首が、さらに締まる。


 意識が切れる前に、身体を捻転させ脱出。某格闘漫画では、行住坐臥、闘いとはいつ何時も起きるとは言っていたが、まさか我が身に起こるとは。怒ることもできず、私は油断した自分を恥じた。


 その後、楽しく遊び、食事に酒をとった。満腹になると人はまた油断する。


 帰り際、甥っ子が駆け寄ってきた。別れの抱擁。さあ、どんとこい。私は待ち構えていたが、甥っ子は飛び込んでくることはなかった。


 意図せぬ激痛に襲われた。


 甥っ子の正拳突きが、南山之寿の世界を貫いていた。悶絶。声すら出ない痛み。甥っ子の背丈と、私の股下は、似た者同士。一日のうち、同じ相手にダウンを二度取られるのは戦士の恥。


 行住坐臥、油断は禁物である。


 

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