授業・10.2


「さて、これはみなさんがペアマッチでどのペアを中心に観ていたかにもよるのですが、大抵のペアが持ち込んだ道具には装飾が見られたと思います」


 その時の光景を思い出すことを後押しするように、「氷銃、ライト、加圧器……」と男が例を挙げでいく。


「繰り返しになりますが、彼らはまだ二回生です実技の一環として道具の使い方を習ってはいますが、それらの機能を損なうことのない装飾の方法は教えていません。改造ならなおのことです」


 生徒たちの思い浮かべた男の道具は、備えた機能こそ普通のそれと変わりないが、改造といって違いのない物だった。


「ちなみに私は自分の道具は自分で装飾を変えていますが、少なくとも学生のうちに私たちから道具のカスタマイズについてその技法を教えるつもりはありません」


 男があの個性の爆発した道具を自作したという事実よりも、あの好き放題がカリキュラムの外で行われているという驚きよりも、ならばどのように手を加えているのかという疑問よりも、男があの改造を装飾だと言い切ったことの衝撃が生徒達の中で勝った。


「きっと今頃、みなさんは『ならどうやって道具に手を加えたんだ』と疑問に思っていることでしょう」


 残念ながら見当違いである。


「その答えは……考古学者に必要な道具を専門に扱うお店、通称『考専』です」


 考専という単語に生徒たちの関心が傾いた。


「考専は文字通り専門店ではありますが、卵であるみなさんでも利用することが可能です。入店に必要な証明書を学生証で代用できるのです。そして入店さえしてまえば、制限こそあるものの商品を購入することももちろんできます。ただし、専門店なので学生に手を出せる商品は多くありませんが」


 そうだとは知らなかった生徒たちが目を丸くするのを見て、男は満足そうに頷く。


「しかし、そんな中でも装飾だけならみなさんの軍資金でも高いクオリティのものを提供してもらえると言っておきましょう。当然こちらも学生では制限もありますが、改造にあたるものや法に触れるような装飾でなければかなり攻めたデザインも可能ですよ」


 どうなデザインを思い浮かべたのか、一部生徒の目に輝きが灯った。


「そうですね……せっかくですしペアマッチで見かけた装飾を例に挙げましょうか」


 そう話しながら男はチョークに手を掛ける。

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