第10話 逮捕

 今日は朝から雨が降り現場仕事は中止になり10時から施工図を描く

予定だった。


呼び鈴がなり、玄関のドアを開けるとこの前の刑事二人と制服を着た数人

の男達がいた。


中年の刑事が一枚の紙を目の前に掲げ「9月3日午前8時26分、○○正人、○○静雄並びに○○未来殺害容疑で逮捕する」と読み上げた。


そして若い刑事に手錠を掛けられた。


「私は殺していない! 何故私がミクを殺さなければならないのか?」と叫んだが信じて貰えないようだった。


私は椅子に座らせられ、制服の男達が部屋の中に入って来て部屋の中など

色々と捜し始めた。


暫くすると、「洗面台の下の収納庫にありました」と透明なビニールの袋に入れたサバイバルナイフを鑑識の男が持ってきた。


「これに見覚えは無いか?」


「ありません」


「嘘を言うな! これが凶器だ!」


言われても本当に始めて見る物だった。


またも報告があり浴層で血痕が発見され、脱衣室の物入れから犯行時に持っていた毛布と同じものがあったと、私には全て記憶がなかった。


これから本署に連れて行くと言われたので「会社に連絡しないと、今日は施工図の仕事があるから、工事が遅れると不味いです」


「お前、殺人容疑で逮捕されているのに、良くそんな事考えられるな!」若い刑事が憮然として言い放し私を立ち上がらせた。


拘留期間は二日と何かで知っていたので、今日は金曜日だから日曜日の朝には帰って来られると考えた。


本署に連れて行かれて早速取り調べが始まった。


今日来た刑事二人が担当になった。


河川の画像を見せられたが確かに私が写っていたが、全く覚えが無いので私に似ている人だと言うと、「ふざけるな!」と怒鳴られた。


血痕もミクと血液型が同じで、毛布にも付いていたと説明を受けたが、「私は殺していない」と叫び続けた。


ドアをノックする音がして他の刑事が入って来て中年の刑事に耳打ちをした。

「国会議員の黒山氏の依頼で弁護士と精神科医が来た」と話して刑事二人は部屋から廊下に出ていった。


廊下では二人の刑事が話していた。

「武内さん、如何いうことですか?」


「署長から○○正人は国会議員の黒山氏の三男で精神病を患っている、尋問しても無駄なので、早く検察に廻して欲しいと依頼があったそうだ」


「いくら精神病でも、政治家の子でも二人殺しているのですよ!」


「恐らく、検察で精神病の簡易鑑定か本鑑定で認定され精神病院に入院する。でも二人殺しているので社会的に重大な案件ですんなり行かないと思う」


「入院して、良くなったらまた世間に出てくるのですか?」


「いや、重大な案件なので普通なら、退院して再審理となり暫く又は永久に出て来られないだろう。唯、義父のミクに対する行為が世間に知れると義父が殺されて当然だと正人を庇う声が増えれば重大な案件ではなくなる。その時に政治力を使い彼は世間に出てくるだろう」


「起訴は出来ないと言うことですか?」


「そう、もう尋問しても無駄だが検察に送るまで2日近くあるので、上部に精神病の教授を手配して貰い、尋問に同席して貰う」

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