第9話 事件現場

 署に帰る途中で白鳥が「正人が美鈴と信二を友達と言ったのは

思い込みですかね?」


「たぶん、二人も知らないといっているので正人の思い込みだと思う」


「では、ミクさんとの事も思い込みですか?」


「それは分からない、ミクさんは自由奔放だから正人と知り合ったかも? そうだ! 事件現場に行って見よう」


刑事達は土手の入口にある小さい駐車場に車を止めた。

そこから川上に少し行った処に殺人現場はあった。


まだ現場のテープは張られていた。土手の散歩道には手掛かりになる物は無かった。


戻ってきた時に橋の袂に照明灯があり、その中間部にカメラらしきものがあるのを発見した。


「あれは防犯カメラじゃないよな?」


「違います。川の水位が上がるのを監視するカメラです」


「あまり期待できないが、明日確認しよう。それと正人の写真は?」


「建設会社からメールで今日にでも送られて来ます」


「じゃ、明日は美鈴に写真の確認をして貰い、河川管理課でカメラデーターを

確認しよう」


「はい、分かりました」


次の日、美鈴は正人の写真を暫く見ていた。

「ああー この人はお客さんで良く昼食を食べに来ていました。余り話さなくて小さい声で注文して、何時もミクの事を観察するように見ていました」


「他には何かありませんでしたか?」


「ありません。顔も風貌も特徴がなく余り印象に残っていませんでした」


次に県の河川管理課に行き河川カメラのデータを見せてもらった。

2カ月前まで保存してあったが、映像は散歩道の半分までしか写っていなかった。


運よく写っている事を期待して見た。

義父が襲われた日の朝の五時半から再生した。

雨が降っていたので夏でも薄暗かった。


四十分頃に川添に犬が見えてきた。小さい犬で芝犬だった。


「白鳥、ミクの家の犬は芝犬か?」


「はい、間違いありません」


引っ張られるように雨カッパを着た中年の男が現れた。

犬と男が画面から消えて直ぐカッパを着た男が写った。


手に古い毛布を持って、毛布から刃先が出ていた。

刃先を見るとサバイバルナイフで犯行に使われた凶器と同じだった。


男は画面から消えて直ぐ引き返して来た。


毛布が血で赤く染まっていて、毛布は返り血を防ぐ物だった。


カッパを被っていたので顔は断定出来なかった。


次はミクが襲われた日の朝の五時半から再生した。

晴天で朝から暑そうだった。


四十分頃、画面の左端にリードロープが見え、ミクらしき女性の体の半分が写った。


暫くして影のようなものが写り右足の腰までの部分が見えた。

だらりと垂れた手には毛布とナイフが写っていたが顔は写ってなかった。

また引き返してきたが足元しか写っていなかった。


「駄目だ!」と言って武内は画面から目を逸らして天井を見上げた。


「武内さん!」と白鳥に呼ばれて武内が画像を見ると若い男がカメラを下から覗きこんでいた。カメラの存在に驚いているようだった。


日差しを遮るように額に揚げた手に血が付いたサバイバルナイフがみえた。


「○○正人だ!犯人だったのか?」武内達は署に帰り逮捕状を請求した。


河川課のカメラの画像が決定的な証拠になり3日程で手配できた。

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