第6話 刑事の聞き込み
○○市警察管内で連続殺人事件が起きたのは戦後初めての事だった。
○○市警察は捜査本部を立ち上げた。
二人の刑事が○○未来の関係者の聞き込みを担当することになった。
「武内さん、私達はミクさんの聞き込みをするだけで良いのですか?」と若手の刑事は聞いた。
「そうだが、私達の聞き込みの中に犯人がいたら我々が主体になって逮捕、取り調べをする。取り調べするのは白鳥は初めてだな?」
「はい、初めてです」
二人の刑事がミクの家を訪問し仏壇で線香をあげると母親は刑事達を応接間に招きお茶を出した。
「すみませんね、奥さん、我々警察の方針が間違っていたので娘さんがこんな事になってしまって申し訳ありません」
「いいえ、あの時、私が犬の散歩を止めておけばこんな事には・・・・」
「いやー 奥さん、娘さんは狙われていて犬の散歩でなくても、何れ襲われていたでしょう」
「ミクは誰かに恨まれていたのですか?」
「今日、私達が来たのはそれを調べる為です。娘さんの交友関係を教えて欲しい。お母さんには言い難いですが、襲われ方が酷く痴情の縺れだと思います。で男友達から教えて欲しいのですが、如何ですか?」
「すみません、就職してから娘とは異性関係の話はしてないので分かりません」
「では親しい女性の友人はいますか? その子なら男友達の事は分かるでしょう」
「あっ、います。同じ職場の美鈴さんが確か娘より年上で良く相談していると言っていました」
「分かりました、その人から当たって見ましょう。あと娘さんの殺された時間のお母さんのアリバイを聞きたいのですが、すみませんね、これも仕事なので」
「あの時に私は犬の散歩に行く娘を送り出し朝食の準備をしていました」
「誰か証明出来る人いますか?」
「はい、前の日の土曜日は旦那の四十九日で義姉が泊っていて一緒に朝食の準備をしました」
「義姉さんは近くに住んでいるのですか?」
「いいえ、県外で遠いので家に泊って貰ったのです」
「分かりました、義姉さんの連絡先を教えて下さい」
連絡先を聞いて刑事達は帰った。
「お母さんは犯人だとは思えませんが?」
「私もそう思うが事件は思わぬ方向に進むことがある。一応義姉には確認してみよう。それと娘の殺害容疑は義姉さんの証言しだいだが、奥さんの旦那殺害容疑が出て来た。あの時は通り魔殺人と断定していたので母親のアリバイは聞かなかったからな」
「でも旦那を殺す動機は何ですか?」
「旦那は娘の義父だった。普通の親子なら問題は無かったが」
「えっ、どういう意味ですか?」
「血が繋がっていないから男女の関係があったかも? それを知った奥さんが? 悪まで推測だけど、それと娘が義父を殺した可能性もある」
「いやー 娘さんは犯人じゃ無いでしょう? 使用した刃物や力の入れ具合や刺された傷の高さで同じで同一犯人だと捜査会議で言っていましたから」
「そうだな・・・・」
刑事達はミクの務めていたレストランで美鈴に話を聞いた。
「ミクさんのお母さんから美鈴さんに聞けばミクさんの交友関係が分かると聞いてきたのですが?」
「はい、分かりますが高校時代からですか?」
「いいえ、ミクさんが亡くなる直前に付き合っていた人でいいです」
「はい、確か恋人と呼べるのは3人います」
「その3人の名前と会社を教えて下さい。あとミクさんと義父さんの関係で何か知っていますか?」
「本人が死んでしまってこのまま黙っていようと思いましだが、ミクと義父さんは男女の関係がありました」
「それを知っているのは美鈴さんだけではありませんね?」
「はい、お母さんに知られたとミクは話していました。それと先程の3人の一人で私の彼氏だった人です」
「えっ、彼氏を取られたのですか? 平気なのですか?」
「平気です。それだけの男だと思っていますし、それにミクのことはそれ以上に好きでした。何となく憎めないのです」
「そうですか、ミクさんが襲われた時のアリバイは? 仕事で聞かないといけないので、悪いですね」
「私はその時間は何時も寝ていますが、証明出来る人はいません」
「分かりました。あとはミクさんが誰かに恨まれているとかありませんか?」
「人に恨まれるような子では無いと思います」
「そうですか? また来ます」
外に出ると強い日差しが降り注ぎ、冷房の効いた店舗から出た刑事達はむっとした熱気に包まれた。
腕時計を見ると三時前だった。
次に美鈴の元彼の建設会社の現場事務所に向かった。
事務所に入って「○○信二さんはいますか? 警察のものですが」と証明書を見せた。女子事務員に低いブースで囲まれた応接室に通された。
暫くして緊張した様子で若者がやって来て椅子に座った。
「○○未来さんはご存知ですね?」
「はい、知っています」
「亡くなる前まで付き合っていたと聞いていますが?」
「はい、付き合っていました」
「他にも彼氏がいることは分かっていましたか?」
「知っていました。後二人いる事も分かっていました」
「嫌じゃありませんでしたか?」
「前から彼氏がいるのは知っていました。ミクの恋人になるのが夢でした。ミクの無垢で自由奔放な考え方が好きだった」
「無垢?」
「あっ、すいません、何をするにも心を白紙のようにするのです。だから一緒にいるのが楽しくて好きになれるのです。ミクの彼氏になるのは彼女の行動を許せる人で誰でも良い訳ではありません」
「ちょっと宗教見たいな感じですね?」
「そうです! ミクに教えられることが沢山あります。大好きでしたので今回の事は残念でショックです」
「それはそうと、アリバイはありますか?」
「はい・・・・今週の日曜日ですね? そうだ、社長とゴルフに行きました。県外のゴルフ場で八時スタートなので五時半頃に出発しました。車に社長と監督を乗せていたので 聞いて貰えば分かります」
「あと、ミクさんを恨んでいる人に心当たりありませんか?」
「いや、ありません、人に恨まれる子じゃありませんから!」
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