第4話 殺人事件
今日は日曜日で休日なので朝九時頃まで寝ていた。平日は5時に起きて6時までに会社に行っているので、この時間まで寝ていられるのは極楽だった。
朝早くから雨が降っていたのは寝ていても音で分かっていた。今も降っているのでジメジメして蒸暑く憂鬱になった。
何時もの癖で起きて直ぐテレビのスイッチを入れた。
食堂のテーブルの上のトースターに食パンを二枚入れ、冷蔵庫からマーガリンを出した。焼けた食パンにマーガリンを塗り皿に乗せてテレビの前に座り、小さいテーブルの上に置いた。
粉スープをカップに入れお湯を注いでいる時に、テレビが地元のニュースを放送していた。
(○○市で殺人事件がありました。現場は○○川の土手に造られた散歩道の脇で中年の男性が体中を刃物で何か所も刺され亡くなっているのを犬の散歩に来た人が発見しました。被害者は○○市に住む○○静雄氏50歳で犬の散歩中に襲われたと思われています。○○氏は毎日5時30分~6時まで犬の散歩をするのが日課で、怨恨と通り魔殺人の両方で捜査をすると警察は発表しました)
○○市はこの町だ、そして、○○静雄はミクの義父だ! 誰が殺した? 無差別殺人なら仕方が無いが、怨恨ならミクがやった可能性が高い。如何しよう? 何かしてやりたいが今は何も出来ない。
暫くして、ミクから火曜日は通夜で行けない、暫く喪中になるので来週の火曜日に来ると連絡があった。そして、家族にも紹介していないので葬儀も出席しないでと言われた。
火曜日にミクは来た、少しやつれているように見える。
「大変だったね、犯人は判った?」
「うん、判らない、警察の人が義父の事を調べたが特に恨まれる要素がなく、通り魔殺人の可能性が高いと言っていた」
「犬の散歩って言っていたけど、犬飼っているんだ?」
「うん、飼っている、今は私が散歩させている」
「また狙われると大変だから気を付けないと」
「有難う、其の時間は警察の人が現場で張っているから大丈夫だよ。あっ 今日は刺身があったので買って来た」
「もう仕事は行っているの?」
「うん、今週の日曜日から来てくれと言われて」
様子からミクがやった可能性は低いと感じた。
テーブルの上にツマミが置かれ、私は椅子に座って缶麦酒のプルを開けコップに注ぎ飲み始めた。ミクも同じ様に麦酒を飲み始めた。
「ミク、お父さんが亡くなり精神的に大丈夫?」私はミクと義父の関係が頭の中にあり確かめるように聞いた。
「うん、私は大丈夫、でもお母さんが酷く落ち込んでいる」義父の死はそんなに重く無いらしい、やはり、SEXと愛情は別だと思っているのか?
食事も終わり、先にミクがシャワーを浴び寝室に入り、私は後からシャワーを浴びミクが待っているベッドに入った。
「実は美鈴さんからおとうさんとの話を聞いた」
「えー 美鈴さんはそんなことまで話したの・・・・」
「ミクのこと庇って言ってくれたと思う」
「それを聞いて正人はどう思ったの? 私を嫌いになったの?」
「事情が分かったので少し気が楽になった。まだこのままミクと付き合って行きたいと思う」
「嬉しい!」と抱き付いてきた。シーツが剥がれ形の良い乳房が見えた。
この若い体を中年の男が弄んだと思うと急に怒りが湧き、顔をミクの体に埋めて行った。もう夏も終わりに近づき、蛙の鳴き声も小さくなってきた。
工事現場のコンクリートの打設が遅れて六時間後に鏝で均す為に午後九時に仕事が終わった。こんな事は偶にあった。
会社のトラックを運転して帰る途中にミクのレストランがあった。時間的にはミクが帰る頃だった。でも私は嫌なものを見てしまった。ミクが男の車に乗り込んでいた。一瞬怒りが湧き車を止めてミクを車から引きずり出そうと考えたが、唯、私は見ているだけだった。
何時ものように火曜日にミクは缶麦酒とツマミを持ってアパートに来た。
夕食の準備も終わり麦酒を飲み始めた時に話した。
「先週の金曜日夜九時頃、ミクは男の車に乗らなかった?」
ミクは少し驚いた顔をしたが「あれは知合いの人で家まで送って貰ったの」そう言われると否定する証拠もなく黙ってしまう。
暫く沈黙が続きミクが「正人、私のこと疑っているのね、過去が過去だからね、でも私、正人には嘘を付かないと決めたの、SEXは好きな人でなければ楽しくないと思えるようになれた」私はその言葉を信じた。
でも何かもやもやとした気持ちなので、信二さんに相談した。次の日、美鈴さんからの伝言を信二さんから聞いた。
(正人以外の男と付き合っている。先日の金曜日はその男の家に泊りに行く日だった。私は正人だけにしなさいと説教したが駄目だったと)
目の前が暗くなり、怒りが込み上げてきたが、ミクの生い立ちが頭をよぎり許そうになっている自分がいた。
もう振り回されるのは嫌なので来週の火曜日に別れ話をしよう。いくらミクが泣き叫んでも別れようと決心した。
でも火曜日にミクが来る事は無かった。
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