第12話 渓谷の魔熊 対 老ガンナー と 手伝い勇者

 わたしは、ゆめの中で勇者ゆうしゃばれていた。

 かがみに映る自分は、金色の長いかみで、美少女で、華奢きゃしゃだった。身のたけほどある大剣を背負せおい、ビキニみたいなふくを着て、防御ぼうぎょ力に不安をかんじる露出度ろしゅつどの高い赤いよろいまとっていた。

 日々は、大剣をるい、モンスター退治たいじれていた。

 人間の生活圏付近せいかつけんふきんにも、危険きけんなモンスターの生息域せいそくいきおおかった。毎日のように、退治を依頼いらいする書簡しょかんとどいた。

 仲間なかまは、人間の戦士、エルフの魔法まほう使い、人間の僧侶そうりょだ。だったと思う。

 華奢きゃしゃな美少女が大剣を軽軽かるがると振りまわす。それはとてもアンバランスな状況で、だからゆめなのだと認識にんしきできた。

 現実げんじつの自分が何者なのか、男なのか女なのかさえ、夢の中では思い出せない。でも、夢の中で、わたしは金色の長いかみの美少女だった。

 わたしは、夢の中で、勇者と呼ばれていた。


   ◇


「あ、あの、王国から、魔熊まくまの退治に来ました、勇者です。よろしくおねがいします」

 勇者は、気後きおくれして、緊張きんちょうして、ぎこちなく、右手を差しべた。

 相手のろうドワーフが、勇者を横目よこめにチラと見て、その手にみが長銃ちょうじゅうへと視線しせんもどした。挨拶あいさつも返答もなかった。

 勇者は笑顔えがおのまま、にぎってもらえなかった右手を彷徨さまよわせる。

 今回の任務にんむは、大きな村の近くの渓谷けいこくに居ついた魔熊の退治だ。戦士が別用で不参加で、勇者と僧侶とエルフの三人で来た。

 今挨拶して無視むしされたのは、案内あんない役の、いた男のドワーフである。標的ひょうてきの魔熊を長年追っているガンナーらしい。凄腕すごうでらしい。

 勇者はこまった。案内役が愛想あいそのない頑固がんこそうな偏屈爺へんくつじいさんとはいてない。よりにもよって、交渉こうしょう係の戦士がいないときにこれはない。

 ドワーフとは、人間とくらべて背がひくく、肉体が頑強がんきょうなマッチョで、金属の鍛冶かじ加工にひいでた種族しゅぞくだ。だいたいはかみがボサボサだし、金槌かなづちを握っているし、厚手あつでの作業着を着ているし、すす薄汚うすよごれているし、男であればひげボウボウのことが多いし、ガサツで乱暴らんぼう印象いんしょうが強い。

 げんに、目の前にいるドワーフも、灰色の髪ボサボサの髭ボウボウ、きたなけものの毛皮みたいな服を着て、ボロ小屋のかたわらの切りかぶすわり、ゴツい長銃をよごれた布でみがいている。ガサガサにれたかおには、大小の傷痕きずあとが見てとれる。特に、はな横一閃よこいっせんと右目の上のななめの傷痕が、大きくて目立つ。

「本当に、このような小汚こぎたないドワーフごときと、一緒いっしょに行動しませんといけませんの? しかも、じゅうを使いますような足手纏あしでまといのかたと?」

 エルフが、不快と表情ひょうじょうに出して、問題もんだい発言をぶっぱなした。

 勇者は、わった、と思った。もっとおそれていた事態じたいが、最初さいしょの挨拶の段階だんかいで起きてしまった。

 エルフは、思考をはばかりなく言葉にするまま御嬢様おじょうさまだ。人前でしゃべらせてはいけなかったのだ。もう手遅ておくれだ。

「何じゃとぉ?!」

 老ドワーフがおこった。エルフをにらみあげ、目を血走らせ、ひたい青筋あおすじかべた。

「銃なんて、魔法まほう超劣化版ちょうれっかばんでしかありませんことよ。魔熊まくまを長年追っていますのも、ようするに、ずっとたおせずにいますだけでしょう? 銃使いなんてザコでは、倒せないのも無理はありませんわねえ」

 エルフの嘲笑あざわら口調くちょうに、ドワーフの顔がまる。いかりが頂点を突破とっぱして、爆発ばくはつする。

だまって聞いとれば、いい気になりおって! こっちこそ、そんなお高くとまったエルフ風情ふぜいとの共同戦線なんぞ、おことわりじゃあ! とっととせろ!」

 エルフとドワーフは、種族間で非常に仲がわるい。とおい昔から、おたがいに嫌悪けんおし、敵視てきしに近い感情をいだく。 

 そうでなくても、今のはエルフが悪い。怒らせて当然の失言だった。

「んまぁっ?! ドワーフって、本当に無礼ぶれいで、みにくい種族ですわ。勇者、ワタクシ、先に宿やどかえらせていただきましてよ」

「あ、はい、どうぞ」

 同じくおこったエルフの背中を、勇者は安堵あんどの表情で見送る。とりあえずこの場は、エルフがいない方が話を進めやすい気がする。

「それ、銃って呼ばれる武器ですよね? エルフさんが、魔法の超劣化版って言ってましたけど、そうなんですか?」

 勇者は、なるべく人懐ひとなつっこい笑顔えがおで、老ドワーフに話しかけた。

 ろうドワーフににらまれた。エルフの名前を出したのは迂闊うかつだっただろうか。

 老ドワーフは、じゅうへと視線しせんを戻し、みがく。宝物を見る子供のように、ひとみかがやかせる。

「こいつはな、長年をワシと一緒にたたかってきた相棒あいぼうじゃ。かぞえきれん魔獣まじゅう仕留しとめてきたし、命をすくわれたことも数知かずしれん。こいつでなけりゃあ、魔熊はたおせん」

 その長銃はゴツく武骨ぶこつで、黒鉄くろがね色ににぶく光る。グリップは、金属きんぞくにボロ布をいてある。けんしか知らない勇者にはそれ以上は分からないし、それだけ分かれば十分じゅうぶんでもある。

「カッコイイですね。よく知らないのですけど、どういうふうに使うんですか?」

 勇者は興味津津きょうみしんしんで、鈍く光る黒いそれをのぞき込んだ。

「そりゃあ、オマエ。こうやってかまえて、こうやってねらいをつけて、この引きがねを引くんじゃあ」

 老ドワーフが、上機嫌じょうきげんで、銃を構えてみせた。

「そうすると、どうなるんですか?」

 勇者は、ここぞとばかりにたたみかけた。

「ここんところの銃口から、なまりたまち出される。いわをもくだく速度と威力いりょくで、じゃ。弓とか魔法とかとはくらべもんにならんぞ」

「わぁ、すごい! 強力なんですね!」

 偏屈へんくつな老人くらいは村にもいたので、せっし方が多少は分かる。村にはいなかったえらい人との接し方の数百倍は分かる。

 勇者は、嬉嬉ききとしてかたる老ドワーフに話を合わせた。老ドワーフの自分語りは、昔の魔獣狩まじゅうがりの武勇伝ぶゆうでんを中心に、一時間ほどつづいたのだった。


   ◇


 勇者には三人の仲間なかまがいる。男の屈強くっきょうな戦士、高慢こうまんな女エルフの魔法まほう使い、小柄こがらむねの大きい天然少女僧侶てんねんしょうじょそうりょである。

 戦士は青い短髪たんぱつの、二十歳を過ぎたくらいの若い男である。背の高いマッチョで、被覆率ひふくりつの高い青黒い金属鎧きんぞくよろい装備そうびしている。背中に大きなタワーシールドを背負せおい、こし戦斧せんぷをさげる。

 エルフは、エルフ特有の長くとがった耳の、ゆかとどくほど長くやわらかい緑髪みどりがみの、つめたい印象いんしょうの美女である。しゅ色の長いローブをまとい、赤い水晶球のまった魔法杖まほうづえを手につ。人間よりも寿命じゅみょうがかなり長い種族しゅぞくで、外見的には大人の女で、女としては背の高い、高慢こうまん御嬢様おじょうさまである。

 僧侶は、村の教会でも見かけるような国教こっきょう僧服姿そうふくすがたで、こし鎖鉄球フレイルをさげた、モンスターとたたかう僧兵である。天然てんねんっぽい少女である。小柄こがらで、むねが大きくて、ピンク色のかみで、子供っぽさののこる十代なかばくらいのかおで、年齢ねんれい的に勇者にちかい。

 今回は、戦士は別用で不在だ。エルフはドワーフとの同行を断固拒否だんこきょひし、宿やど部屋へやから出てこなかった。僧侶は、けわしい渓谷けいこく探索たんさくきびしいだろうし、エルフの相手をたのんでいてきた。

 だから、魔熊まくまの退治には、勇者と老ドワーフの二人だけで向かうことになる。

「うわぁ! かなり険しそうですね」

 勇者は渓谷を見あげた。

 れそうな木がまれにあるかなあ、くらいにてた渓谷だ。枯れた谷底から垂直すいちょくに近いがけが高くそびえ、どこもかしこも赤茶色の岩肌いわはだしか見えない。

 地面は、かどとがった石ころと砂がじり、あるきにくい。谷底の道は、ずっとおくまでびている。

 がけは、れたりくずれたりで凸凹おうとつが多い。かたい岩というよりは、もろ粘土ねんどみたいに見える。あれはのぼりたくないなあ、と内心で思う。

「どこからどうさがしますか? わたしは戦闘せんとう専門なので、ドワーフさんの指示にしたがいますよ」

 勇者は、人懐ひとなつっこい笑顔えがおで、老ドワーフに聞いた。

「まずは、崖を登るぞ。登れる道は見つけてある。谷底を歩くのは、危険じゃからなあ」

 老ドワーフが、微塵みじん油断ゆだんもないするどい目で答えた。すでに臨戦態勢りんせんたいせいだった。

 魔熊との戦いはすでに始まっている、と勇者にも分かった。探し始めた段階で、一挙手一投足が結果につながるのだ。生死を分けるのだ。

 勇者は、突然の緊張きんちょう感に体を硬くして、うなずいた。歩き出した老ドワーフの、茶色のけものの毛皮を着たガッシリとした背中を追って、かたい一歩をみ出した。


「ハァ、ハァ……。やっと、頂上ですか? 今度こそ、頂上ですよね?」

 勇者はいきを切らして、硬い赤茶色のれ地にすわり込んだ。崖の上は、わりと広い荒れ地で、凸凹でこぼこしていて、たぶん反対側の崖のところで唐突とうとつに地面が消えていた。

 ここまで、急角度の斜面しゃめんを登ってきた。足をけられる凸凹おうとつおおかった反面、肝心かんじん凸凹おうとつくずれやすくて、気をつかって精神せいしん的にった。垂直じゃないだけマシ、との感想かんそうしか出なかった。

 つんいで崖際がけぎわから下をのぞく。こわいくらい高い。上から見ても、水もみどりもなく、赤茶色だけが広がって、荒れてる。

「ちょっと休憩きゅうけいするか。今のうちに、魔熊まくまについて話してやろう」

 老ドワーフも、荒れ地にこしをおろした。木のさらき、保存食をいくつかならべ、勇者の前に差し出した。

「あ、ありがとうございます」

 勇者は老ドワーフの対面たいめんに座りなおす。持参じさんした竹の水筒すいとうから水を飲み、差し出された皿からチーズらしきものを口に入れる。

「ワシはもう、何年もヤツを追っとる。ヤツは狡賢ずるがしこく、決まった縄張なわばりをたず、各地を転転てんてんとしとるんじゃ」

 老ドワーフが、長銃を点検しながら続ける。

「かといって、魔獣まじゅうとして弱いわけじゃあないぞ。むしろ、強い。ワシが仕留しとめたどの魔獣よりも、はるかに強い」

 この老ドワーフに協力をあおいだ理由に納得なっとくいく。強くて狡賢い獣型けものがたモンスターなんて、初見で退治たいじできるわけがない。

「魔熊って、見た目はどんな感じですか?」

 勇者は興味津津きょうみしんしんで聞いた。

「見た目は、大きなくまじゃな。体長は約六メートル。前脚まえあしが四本ある」

「えっ? 熊って前脚四本もありましたっけ?」

 勇者は思わずツッコミを入れた。

後脚あとあしは二本じゃから、合計であし六本じゃ。魔獣なんて、そういうもんじゃろ?」

「えぇ……?」

 勇者は困惑こんわくした。老ドワーフが一般常識いっぱんじょうしき口調くちょうだから、尚更なおさらだ。

毛皮けがわの色は赤茶色じゃ。体は、硬い毛皮と、灰色の外骨格がいこっかくに守られとる」

「えっ? 熊って外骨格ありましたっけ?」

 勇者は思わずツッコミを入れた。

「完全におおわれとるわけじゃあないぞ。赤茶色の毛皮と、灰色の外骨格で、こう、格子模様こうしもようになっとるんじゃ」

 老ドワーフが、硬い地面にもったすなに、格子模様をいた。

「えぇ……?」

 勇者は困惑した。自分が知る熊は熊ではない疑惑ぎわく浮上ふじょうしかけた。

「武器は、つめと、きばじゃ。体がデカいし、筋力きんりょくすさまじい。デカいのに身軽みがるじゃし、慎重しんちょうで、狡賢ずるがしこいときとる」

 老ドワーフの説明せつめいを聞く限り、強敵に聞こえる。勇者だけでは、げられてわりだと思う。老ドワーフのたすけをりても、退治できるかあやしい。

「弱点とか、ありませんか? 片目かためつぶれてるとか、あしが一本うごかないとか、爪が一本だけ折れてるとかでもいいです。めるときの突破口とっぱこうみたいなものがしいのですけど」

「一つだけ、あるぞ」

 老ドワーフが、口角こうかくりあげ、目のはしをギラリと光らせた。武勇伝開始の合図あいずだ。

「わぁっ、すごい! 弱点が、あるんですか?!」

 勇者は、大仰おおぎょうおどろいてみせた。昨日もこんな感じだったので、れた。

「うむ、あれは、ぬまだらけのジャングルじゃった。ワシは、魔熊の痕跡こんせきたよりに、低木をき分け、沼を横切よこぎり、方角も分からんような中を彷徨さまよった。何日も彷徨ううちに、別の魔獣の襲撃しゅうげきを何度も受けた」

 メインの話の前置きの話である。

魔熊まくまの痕跡は主に、足跡あしあとふん、それから爪痕つめあとじゃな。ヤツは爪を使って器用に動くが、そのせいで爪痕をのこしやすいんじゃあ。足跡の追いづらい沼地でも、木のみきの爪痕のおかげで見失みうしなわずにんだわい」

 前置きの話の補足ほそく説明である。

「じゃが、魔熊も、ワシの追跡ついせきに気づいとった。ワシを警戒けいかいし、なかなか姿すがたを見せんかった。で、ワシはどうしたと思う?」

 前置きにクイズが入った。今回の話は特に長そうだ。

「え、えーっと、……木にからつたをロープわりにして、えだから枝にうつって急接近した、というのはどうでしょうか?」

 勇者は真顔まがおで答えた。

はずれじゃが、わるくはないのう」

 老ドワーフがたのしげにわらった。

「ワシは、沼のどろを全身にりたくって、ヤツを追った。ヤツはつねにワシの風下かざしもへとげとったから、においでワシの存在を認識にんしきしとると気づいたんじゃ。そしてついに、ワシはヤツを発見した」

「おおっ! ついにですね!」

 勇者は興奮こうふん気味に合いの手を入れた。

「ヤツは、ワシを見るなり飛びかかってきおった。こんないぼれドワーフごときは瞬殺しゅんさつだ、と判断はんだんしたのじゃろう」

「それで、どうなったんですか?」

 固唾かたずむ。結果が気になる。らさずに、早くおしえてほしい。

「六メートルの巨大な魔獣まじゅうじゃ、ワシは相討あいう覚悟かくごで銃をかまえた。丸太みたいな太い前脚まえあしかすれば、鍛冶かじきたえた自慢じまんの肉体も簡単かんたんに引きかれようて。しかも、前脚が四本もありおる」

「そうですよね、そうですよね」

 勇者は前のめりになっていた。

「ワシは、ヤツの心臓しんぞう位置いちねらいをさだめて、引きがねを引いたんじゃあ。ズドンッ、とれた発射音はっしゃおんで、なまりたまち出された」

 老ドワーフが、はな横一閃よこいっせんきずを、右手の人差し指で示す。

「ヤツの心臓しんぞう位置いちにある外骨格が、粉粉こなごなはじけ飛んだ。直後ちょくごに、ワシの鼻先をヤツの爪がかすめた。銃の反動で後退あとずさっとったおかげで、死なずにんだと今でも思っとる」

すごい! 凄いですね!」

 勇者は興奮気味にひとみかがやかせた。

 老ドワーフの鼻の傷が、一層いっそうカッコイイものに見える。まさに、戦うおとこ勲章くんしょうである。

 素直すなおめ言葉に、老ドワーフがほおを赤くして、れる。

「ふ、ふんっ。世辞せじなんぞならべても、何も出んぞ」

「お世辞なんかじゃありませんよ。つまり、魔熊まくまの心臓の位置だけ、外骨格がない、ということですね」

 勇者は微笑ほほえましげに微笑びしょうした。

「そうじゃ。そこから、ヤツの心臓をねらう。あの魔熊を仕留しとめるには、それしかない」

 道は示された。

 この広い渓谷けいこくのどこかに、魔熊と呼ばれる凶暴きょうぼうなモンスターがいる。これ以上の被害ひがいが出ないように、人々が安心して生活できるように、かならずや退治してみせる。

 勇者の責任せきにんと、ほこり高きガンナーに、かたちかいを立てる勇者だった。


   ◇


 出会であいは、突然とつぜんだった。

 勇者とろうドワーフの目の前に、魔熊まくまがいる。勇者も老ドワーフも、緊張きんちょうし、身構みがまえる。

 魔熊は、がけ上のれ地に、崖下からあらわれた。いわにピッケルをすような音が、渓谷けいこくり返しひびいて、不意にび出してきた。

 見た目は、ぎりぎりで熊だ。

 六足歩行でも、見あげるほど大きい。するどく吊りあがった目は赤い。口を開け、鋭い牙を見せ、低くうなり、威嚇いかくしてくる。

 筋肉きんにくりあがる体は、赤茶色の毛皮と灰色の外骨格に守られる。毛皮と外骨格が、赤茶と灰の格子模様こうしもようす。

 魔熊が二本の後脚あとあしで立ちあがった。四本の前脚をりあげ、二人の前に立ちふさがった。

 立ちあがると、いよいよ大きい。爪と牙の迫力はくりょくちがう。丸太みたいに太い前脚が、四本もある。

 ……いや、やっぱり、ぎりぎりで熊ではない気がする。勇者の知る熊ではない。こんな熊がいてたまりますか、と心の中でツッコむ。

 直立で威嚇いかくする魔熊の、心臓しんぞうの位置を確認かくにんする。そこだけ、格子模様がけている。そこだけ、灰色の四角形が、たしかにりない。

 背負う大剣のつかを、肩越かたごしに右手でにぎる。魔法式のはずれる。

 身のたけほどある大剣を、かる素振すぶりし、むねの高さにかまえる。切っ先を魔熊まくまへと向け、鋭く魔熊を見据みすえ、プレッシャーをかける。

 大剣を外骨格の隙間すきまへとすべり込ませ、毛皮を突きやぶって心臓へと突き立てれば、それでちだ。予想よそうよりも簡単に終わりそうだ。発見が困難こんなんな相手を、簡単に発見できたのだから、拍子抜ひょうしぬけする呆気あっけなさもやむなし、だろう。

 勇者の左数メートルに立つ老ドワーフも、長銃ちょうじゅうを構える。魔熊の視線しせんが、老ドワーフへと向く。

 魔熊が老ドワーフへと飛びかかった。巨体きょたいを感じさせない、目をうたが瞬発力しゅんぱつりょくだった。

 勇者は老ドワーフの前へび、りおろされるつめを大剣で受ける。まとめてはじき飛ばされ、老ドワーフと一緒いっしょに荒れ地をころがる。

大丈夫だいじょうぶですか、ドワーフさん?」

「ワシにかまうな。半端はんぱきたえ方はしとらん」

 二人とも無傷むきずだ。爪は大剣で受けた。パワーけしただけだ。

 すぐに立ちあがる。大剣を構えなおす。魔熊まくまが、六足で、老ドワーフ目掛めがけて突進とっしんする。

 勇者は左腕ひだりうでで老ドワーフをかかえた。魔熊の突進はよこびで回避かいひした。両手がふさがっていたので、荒れ地にヘッドスライディングした。

「だっ、大丈夫ですか?」

むすめこそ、大丈夫か?」

 老ドワーフに心配しんぱいされた。ちょっといたし、砂塗すなまみれだ。

 魔熊は、明確めいかくに老ドワーフを狙っている。慎重しんちょう狡賢ずるがしこいはずなのに、不用意に目の前にあらわれたのも不自然ふしぜんかんじる。

「しつこく追ってくるワシが目障めざわりになった、といったところかのう」

 老ドワーフが、たのしげに口角を吊りあげた。いた目に、ギラギラと強い光が宿やどった。

 老ドワーフの想像そうぞうただしければ、魔熊は、目障りな追跡者ついせきしゃを、ここで殺すことにしたのだ。けわしく、せまく、遮蔽しゃへい物の少ない、このてた渓谷けいこくは、獲物えものるのに最適さいてきの地と判断した。最適の地に、勇者と老ドワーフが、たったの二人で、のこのこと追いけてきた。

 勇者のはだに、恐怖きょうふざわつく。背筋せすじえる。ここが敵のえらんだ狩場だとするなら、老ドワーフを守りける気がしない。

 魔熊まくまわらっているような気がする。たぶん、間抜まぬけな獲物を嘲笑あざわらっている。

「ドワーフさん。わたしからはなれないようにしてくださいね」

 勇者は、魔熊と老ドワーフのあいだに立ち、魔熊を見据みすえた。

「ワシに構うな。自分の身は自分で守る」

 老ドワーフが、低くおもい声で答えた。老ドワーフもまた魔熊をりに来たのだから、当然の反応だ。

 勇者と魔熊で、間合まあいをはかり合う。勇者はジリジリとり足で近づく。魔熊は六足を、ノソリノソリと重くはこぶ。

 勇者が先にうごいた。地面れ擦れに跳躍ちょうやくし、むねを狙って大剣を突き出した。

 手前の外骨格に当たって、ガキンッ、と金属きんぞくが打ち合うみたいにった。かたい。しびれる手応てごたえに、ちょっとビックリした。

 すぐさま退いて、爪の一振りをける。六足の姿勢しせいのときは、隙間すきまを狙えそうにない。魔熊が立ちあがるまで、我慢がまん強くつしかない。

 魔熊は後脚あとあしで立ちあがり、勇者におそいかかった。四本の前脚をりあげ、右二本を振りおろした。

 意外とあっさり立ちあがられて、勇者は狼狽うろたえた。かるくパニックになった。とりあえず、爪をふせぎつつ飛び退こうとした。

「さがるな!」

 老ドワーフのさけびに、勇者はわれに返った。

 あぶなかった。勇者が飛び退いたら、魔熊は老ドワーフに向かっただろう。大きな爪で引きいただろう。

 さがろうとしていた華奢きゃしゃな脚を、前傾ぜんけいる。大剣をたてとして、魔熊の爪を受けとめる。華奢な背中が、魔熊のパワーにし負けてる。

 魔熊の胸の、外骨格の隙間すきまが見える。見えるが、爪を大剣でとめた今の体勢たいせいでは、攻撃手段こうげきしゅだんがない。六メートルの巨体の前脚二本にしかかられ、パワーけして、爪を押し返すこともできない。

 すぐななめ後ろで、ズドォンッ、とすさまじい轟音ごうおんがした。耳の中にキーッンと高音がひびいて、眩暈めまいがした。

 八割黒い視界に、魔熊の胸が血をく。それでも魔熊はひるまず、前進して爪を振りおろす。

 勇者は飛びそうな意識いしきをしがみとめて、振り向く。ふらつく足で走り、魔熊のねらう老ドワーフのうでにぎり、引きせ、横にぶ。自身が盾となって、魔熊の爪から老ドワーフを守る。

 背中にいたみが走った。爪がかすった。視界をおおいかけていた黒が消えた。

 目の前にはがけがある。足先数十センチの距離きょりで、赤茶色のれ地が消失しょうしつしている。

 右手は大剣をにぎる。左手は老ドワーフの左手首をつかむ。見えない背後には、魔熊のおもい殺気がせまる。

 一瞬いっしゅんだけ思考する。まよいは、死に直結ちょっけつする。

「てやぁっ!」

 勇者は崖を飛びりた。かんがえるのは、苦手にがてだ。

 自由落下はさすがにたすからないので、崖に大剣を突きす。瞬間しゅんかん、両かたに強い衝撃しょうげきが走る。老ドワーフのみじかうめきが聞こえる。

 とまらない。もろい崖が割れてくずれて、大剣がしっかりとは突き刺さらない。

 足を壁面へきめんに押しつけ、ブレーキをかける。徐徐じょじょ減速げんそくする。地面近くで、ようやくとまる。

 勇者は大剣をがけから抜き、石と砂のじる地面に降りた。老ドワーフの手首をはなし、無事を確認かくにんした。崖の上を見あげ、魔熊をさがした。

 魔熊が、崖の上から、勇者たちを見おろしている。崖際がけぎわを左右にウロつき、おくへと姿すがたを消す。

「すぐに降りてくるぞ。油断ゆだんするなよ」

 老ドワーフが、左腕を布でしばり、太いどうに固定しながら警告けいこくした。がけを飛び降りたときに、左肩をいためたのだろう。

「肩、大丈夫ですか?」

問題もんだいない。右腕みぎうでが動けばたたかえるわい」

 片腕でじゅうに弾を装填そうてんする老ドワーフを見つめる。ギラギラと光る目に、魔熊を狩る以外の雑念ざつねん微塵みじんもない。予告よこくなく銃をぶっぱなした暴挙ぼうきょをそれとなくいさめる雰囲気ふんいきでもない。

 勇者はあきらめて、大剣を素振すぶりする。引っかかれた背中がヒリヒリと痛むくらいで、支障ししょうはない。いつも通りに動ける。

「作戦は、どうしますか?」

 ねんのため、確認した。

 返事がない。不思議ふしぎに思って、振り向く。老ドワーフと、目が合う。

「オマエさんを見くびって、わるかった。オマエさんか、ワシか、チャンスが来た方が仕留しとめるぞ。さっきの一発でヤツのむねの毛皮をいたから、今こそがヤツを仕留める千載一遇せんざいいちぐう好機こうきじゃあ」

 老ドワーフが、口角をりあげ、右手ににぎる長銃をかかげた。

「これでも、勇者ですから。負けませんよ」

 勇者も微笑びしょうして、大剣を掲げた。

 石と砂のじる地面をらして、おもい足音が近づいてきた。


   ◇


 魔熊まくまが、立ちあがり、二人を威嚇いかくする。四本の前脚まえあしを広げ、荒荒あらあらしくえる。

 勇者は、魔熊の正面しょうめんに立つ。勇者の十数メートル後方に、老ドワーフが銃をかまえる。

 大剣を構える。魔熊を見据みすえる。恐怖きょうふは、もうない。

 老ドワーフが勇者を見くびっていたように、勇者も老ドワーフを見くびっていた。守らないと死ぬ一般人くらいに認識にんしきしていた。実際じっさいには、魔獣狩まじゅうがりに命をける、ほこり高きガンナーだった。

「グオォォォッ!」

 魔熊がおそいかかってきた。前のめりにたおれるように、太い右前脚二本をりおろしてきた。

 後方で、ズドォンッ、とすさまじい轟音ごうおんがした。老ドワーフの射撃しゃげきだ。

 魔熊まくまは分かっていたとばかりに、左前脚二本でむねを守る。銃弾じゅうだんが外骨格にはじながされ、がけさる。

 嘲笑あざわらうように口を開けた魔熊の、左前脚をさげたところに、心臓しんぞうねらって大剣を突き出す。一瞬いっしゅんの死角でも、魔熊の反応は目に見えてにぶい。

「たあっ!」

 勇者の渾身こんしんの突きに、魔熊は上半身をひねった。突きはあなとなりの外骨格に当たって、らされた。

 本当に機敏きびんな熊だ。巨大でおもいのに、身がかるい。華奢きゃしゃな勇者みに全身を制御せいぎょする。

 ……いや、ぎりぎりで熊じゃない気がする。ぎりぎりで熊のような気もする。

 魔熊が、上半身のひねもどしで、左前脚二本を勇者へとたたきつけた。勇者は、太い左前脚に左手をつき、華奢な左腕ひだりうで一本で華奢な肢体したいちあげて、えた。

 魔熊の背後に着地ちゃくちする。魔熊に振り向く。魔熊が振り向く。

 魔熊の振り向きざまのつめに、一歩み込み、左かたで肉球を受ける。華奢な肩のけそうな衝撃しょうげきに、を食いしばってえて、大剣の突きで心臓を狙う。

 華奢きゃしゃあしが耐えきれず、ひざふるえて、剣先の向きがずれた。外骨格に当たってかたはじかれた。

 勇者は素早すばやく左肩をすべらせ、肉球からのがれ、後方に跳躍ちょうやくする。手がしびれる。肩がいたい。

 勇者のダメージをさっして、魔熊が追い打つ。

 右の爪をよこびでかわす。左の爪は大剣で受ける。背中から地面にたおれて、みつきを間一髪かんいっぱつける。

 きずと石ころに背中が痛い。魔熊まくまのさらなる追撃ついげきを、ころがってける。

 追撃がしつこい。右の爪と左の爪を交互こうごに、勇者を目掛めがけて振りおろす。勇者は転がりつづけてけ、爪は地面に突き刺さる。

 十秒ほど転がって、勇者は爪を大剣で受け流しつつ、素早く立ちあがった。

 石ころの地面を赤いよろいのブーツで強くり、び込む。大剣の剣先を、六足歩行の魔熊の口を狙って突き出す。

 魔熊が首をひねってける。よこから大剣をむように牙を突き立てる。

 完全に牙が突き立つ前に、やいばを横に振り抜きのがれる。いきおいのままに足をはこび、全身を回転かいてんさせ、ガチンッとみ合う牙の音を背後にき、一回転して、大剣を横薙よこなぎにたたきつける。

 刃は外骨格にさえぎられ、にぶい金属音がした。外骨格の一枚に、ヒビが入った。

 老ドワーフの読み通りだ。勇者の全力の一撃が、魔熊の外骨格にヒビを入れた。

「グルルルルルル……」

 魔熊が低くうなった。めをやめた。嘲笑ちょうしょう慢心まんしんが消えた。

 わりに、警戒けいかい心と慎重しんちょうさがもどった。雰囲気ふんいきの変化と、気配けはいの変容で分かった。

「ハァ……ハァ……」

 勇者は、あら呼吸こきゅうり返す。いきととのえ、集中しゅうちゅうする。大剣を高く振りあげる。

 魔熊は、巨大きょだいで、重く、硬く、強く、身軽で、慎重で、狡賢ずるがしこい。しかし、勝てない相手ではない。

 大剣を振りあげた姿勢しせいで、勇者はうごかない。魔熊まくまも、後脚あとあしで立ちあがり、動かない。おたがいに、微動びどうだにしない。

 にらみ合う。すきつ。長いような、みじかいような、時間が経過けいかする。

 …………カランッ、と石ころのころがりちる音がした。

 勇者がねた。高速でみ込み、魔熊に大剣をりおろした。

 魔熊が、素早すばやく飛び退いて、大剣をけた。太い後脚がかたい地面にみとどまり、一気に前傾ぜんけいし、即座そくざに勇者におそいかかった。

 勇者は大剣をにぎる手をひねり、切っ先を振り戻し、全身を大きく捻って、大剣を高速でりあげた。

 くうを切った。魔熊は、びかかると見せかけて、飛びかかってこなかった。

 大剣を振りきり、華奢きゃしゃ肢体したいびきった勇者を、魔熊が嘲笑あざわらう。大きな口を開けてきばを見せていて、わらっているように見えるだけで、本当に笑っているのかは勇者には分からない。分からないが、嘲笑っているような気がする。

 飛びかかってこなかった魔熊は、勇者に飛びかかってこない。どころか、すぐさま勇者に背を向ける。そっちには、老ドワーフがいる。

 ただしい。勇者は簡単かんたんには殺せないが、老ドワーフは簡単に殺せる。老ドワーフを殺せば、魔熊が圧倒的あっとうてき有利ゆうりになる。

 勇者は、おどろいていた。まだ信じがたかった。ここまでほぼ、がけを落ちてから魔熊が来るまでのたん時間でざつ説明せつめいされた、老ドワーフの読み通りだ。

 魔熊の向こうで、ズドォンッ、とすさまじい轟音ごうおんがした。魔熊が勇者に背中を向けた直後だった。

 魔熊の動きがとまる。重い音で、両膝りょうひざを地にく。前のめりにたおれ、地面をらす。

「時間かせぎご苦労くろうじゃった。死んだふりかも知れんから、まだ油断ゆだんするんじゃあねぇぞ」

 老ドワーフが、偏屈へんくつそうに微笑びしょうして、黒鉄くろがね色の長銃をかかげた。

「はい! ドワーフさんも、お見事みごとでした!」

 勇者は全開の笑顔えがおで、大剣を掲げてこたえた。興奮こうふんしていた。よろこびと満足感まんぞくかんが、華奢きゃしゃ肢体したいすべてをたしていた。


   ◇


「というわけでした」

 勇者は笑顔えがおで、魔熊まくま退治の詳細しょうさいな説明をえた。王城にある勇者の拠点きょてんの、すわれた木の椅子いすに座り、し慣れた木のつくえに、今は両手をいていた。

「へぇ。歴戦れきせんの老ドワーフガンナーかぁ。そいつはってみたかったなあ」

 別用で不参加ふさんかだった戦士が、口惜くちおしげに相槌あいづちを打った。机をはさんで向かいの椅子に座り、陶器とうきのカップにがれた茶を飲んだ。説明自体はよく分からなかった、と表情ひょうじょうに出ていた。

「ドワーフなんて、小汚こぎたなくて、無礼ぶれいで、みにく種族しゅぞくですわ。会っても不快な思いをさせられますだけでしてよ」

 部屋へやすみ姿勢正しせいただしくたたずむエルフが、不機嫌ふきげんに、羽扇はねおうぎで戦士を指し示した。忠告ちゅうこくのつもりのようだ。

「その道で長く生きてるなら、知識ちしき経験けいけん豊富ほうふってことだぜ。そういう人に話を聞ければ、今後こんごかてとなるもんさ」

「その理屈りくつはわかりますけれども、ドワーフごときにおしえをあおぎますなんて、プライドがゆるしませんわ」

 嫌悪けんおかくさぬエルフの物言ものいいに、戦士は苦笑くしょうする。

「説明はよく分からなかったが、魔熊を退治できたのは、そのドワーフがいたからこそ、だろうな。だれがとどめをしたとかじゃない。最初さいしょから最後さいごまでの作戦を立てて、準備じゅんびして、実行したんだ」

「えっ? 説明、分かりにくかったですか? もう一回、説明しましょうか?」

 勇者はショックを受けた。椅子から立ちあがり、机に両手をついて、戦士へと身を乗り出した。

「え? いや、いいよいいよ。知りたいことは知れたから、もう十分じゅうぶんだ」

 戦士が、気さくな近所のお兄さんみたいに笑って、右手を左右に振った。

 会話に不参加の僧侶は、やりげた満足顔まんぞくがおで、行儀ぎょうぎよく椅子に座っていた。


   ◇


 わたしは、ゆめの中で勇者ゆうしゃばれていた。

 かがみに映る自分は、金色の長いかみで、美少女で、華奢きゃしゃだった。身のたけほどある大剣を背負せおい、ビキニみたいなふくを着て、防御ぼうぎょ力に不安をかんじる露出度ろしゅつどの高い赤いよろいまとっていた。

 華奢きゃしゃな美少女が大剣を軽軽かるがるりまわし、凶暴きょうぼうなモンスターを易易やすやす両断りょうだんする。それはとてもアンバランスな状況で、だからゆめなのだと認識にんしきできた。

 現実げんじつの自分が何者なのか、男なのか女なのかさえ、夢の中では思い出せない。でも、夢の中で、わたしは金色の長いかみの美少女だった。

 わたしは、夢の中で、勇者と呼ばれていた。



/わたしはゆめなか勇者ゆうしゃばれていた 第12話 渓谷けいこく魔熊まくま たい ろうガンナー と 手伝てつだ勇者ゆうしゃ END

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