第20話 好きです!

驚いて、無言になった朱羽子に、更に大きな声で告白をした。



「俺はこの喫茶店のプランターの花を大切にする朱羽子さんが好きです!笑顔はないかもしれないけど、お客さんを大切に思ってる朱羽子さんが好きです!毎日灰色だって言いながらも、空を見る朱羽子さんが好きです!俺の…俺の写真を欲しいって言ってくれた朱羽子さんが好きです!だから、俺と付き合ってください!」


「…」


朱羽子は鷹也にそう言われて、本当は泣きたいほど嬉しかった。

本当は、このまま鷹也の胸の中に飛びつきたい!と思うほど鷹也の事が、自分が自分を思ってるよりずっと鷹也が…好きで、好きで、好きで…たまらなかった。


カランカラン。


「後は2人で話すと良い」

マスターは笑顔で、鷹也の頭をポンと撫でると、店の看板を『Close』にして、店を出て行った。



「朱羽子…さん?」

思わず、突然、脅すように、告白したが、マスターが出て行った後、何も言わなくなった朱羽子に、

(やっぱりまずかったかな?)

と鷹也はドキドキしていた…。



「…良いの?」

「へ?」

「私で良いの?私、笑わないよ?」

「良いです!もう半年以上笑顔を見たのさっきが初めてだったけど、…俺だけには、たま―――――――――――――――――――――――――――――にで良いですから、僕にだけ、その笑顔、見せてください。それを見られた笑顔が貴重で、尚更嬉しいから!」

「私の…すべては、本当に重いよ?」

「良いです!俺、空の写真撮りに険しい山とかしょっちゅう登ってるんで!」

ポロポロ零れ出す膿が浄化されていくような感覚だった。

「その重いじゃ…無いんだけど…」

「へ?」

「私…あなたみたいなみたいな心の奇麗な人といるべき人間じゃないよ?」

「良いです!俺の心が奇麗って朱羽子さんが言ってくれるんなら、その朱羽子さんが奇麗な心を持ってるって、誰でも解ります!でも!もし!朱羽子さんの心が奇麗じゃないなら、朱羽子さんが欲しいって言ってくれた写真を撮った俺も心も奇麗じゃないって事だと思うから!どっちにしろ、俺たち、お似合いだと思いませんか!?」

「…そう…かな?私…鷹也君を好きになって良いのかな?」

「え?」




「私…」




こぼれた膿の海が足元を転がり、事件以降たった1人で…苦悩の日々を過ごしてきた朱羽子の言葉も転んで、真っ直ぐ鷹也の目を見れない。

救ってくれる人はいない。

そう思っていた。

それが…少年法に隠された罪の一つになるのじゃないのか…。



そう。

朱羽子がずっと背負ってきたもの…それは人を殺したこと、そして、幼いからと言って、何の罪にも問われなくて良かったのだろうか…と言う大人になって生まれた、朱羽子にとって二重の苦痛が、朱羽子の脳を回っていた時、



「良いです!良いです!もちろんです!」



何だか、とは思えないバカでかいような、『ヤッホー!ヤッホー…。やっ…』

とこだまが聴こえそうになった。

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