5-8 「好き」
ケンシロウはアキトの話を興味津々といった様子で訊いていたが、全てを訊き終わると嬉しそうにアキトの身体に纏わりついた。
「やっとオレもアキトのこといろいろ知れたんだね。嬉しい」
「そ、そうか? まぁ、俺の人生なんてこんなもんだ。別に面白いことなんて何もない」
ケンシロウに抱き着かれたアキトはすっかり顔を赤くした。
「面白いか面白くないかなんてどうでもいいんだ。アキトがオレに全部話してくれたってことだけで嬉しいんだから」
ケンシロウの無邪気な一言一言がアキトの心に響く。ほんわかと心が温かくなり、顔が緩む。
これはもう認めるしかなかった。
運命の番であるとか、そんな小難しい話ではなく、素直にこのケンシロウという一人の人間にアキトは恋をしていることを。
「お、おう。俺もケンシロウのこと、もっと知りたい。俺は……俺は……」
その先がなかなか言い出せずにいると、ケンシロウがそっとアキトの顔に自分の顔を近付けてきた。キスをしようというのだろう。
言わなくてもわかってくれるよな、ケンシロウなら。
アキトはそう思って目を瞑り、ケンシロウの唇が自分の唇に重なるのを待った。
ところが、いくら待ってもケンシロウはアキトにキスをして来ない。
「え?」と思って目を開けると、ケンシロウはアキトにキスをする寸前で動きを止め、ただじっとアキトを見つめている。
「け、ケンシロウ?」
アキトが戸惑うと、ケンシロウはそんなアキトに言った。
「ちゃんと最後まで言おうとしたことを言って。じゃなきゃ、キスしてやんない」
何となくわかってはいたが、二十歳のケンシロウは二十七歳のアキトよりも一枚上手だ。アキトがどんなに頑張ってもケンシロウにコントロールされてしまう。
仕方ない。ちゃんと伝えるべきことは伝えなくては。
きっとわかってくれるだろう、なんて年下の可愛いやつに期待したらだめなんだ。
アキトは心を決め、ケンシロウに告げた。
「俺はケンシロウのことが好きだ」
ケンシロウの顔が真っ赤に染まった。
「オレもアキトのことが好き」
熱っぽくそう答えると、ケンシロウは今度こそアキトの唇にしゃぶりついて来た。
二人のキスは初めは互いの唇をはむところから始まり、次第に舌を絡ませ、激しさを増していく。
唾液の絡む音が二人だけの研究室の中にイヤらしく響き、その音が聴覚を悪戯に刺激して二人の劣情はさらに燃え上がる。
アキトは研究室の中でキス以上の行為をすることを少しばかり躊躇ったが、盛り上がるケンシロウへの愛欲に、ただただ身を任せたいと思った。
アキトはケンシロウの身体をまさぐりながら、勢いに任せて机の上に押し倒した。並べておいた本がバサバサと音を立てて崩れるが、二人の勢いは止まらない。
アキトの手がケンシロウの身体をシャツの下に侵入していく。
「はぁうんっ!」
ケンシロウの身体がビクンと跳ね上がり、甘い吐息と悩まし気な声が漏れる。何ともその様が愛くるしい。
今度はシャツをたくし上げ、ピンク色の小さな乳首に吸い付く。
「あんっ!」
一際大きな喘ぎ声が漏れ、身体がピクピク反応する。
それと同時に、舌の先に触れる丸い突起がこれでもかとそそり立ち、その感触がまた官能的にアキトの感覚を刺激する。
「気持ちいいか?」
アキトの問いに、ケンシロウは荒い息をしながら頷いた。
「アキトの身体も……舐めたい」
ケンシロウの願いをアキトは叶えてやれそうもなかった。
もし今ケンシロウに身体にその舌で少しでも触れられたら、その瞬間に絶頂に達してしまいそうだったのだ。
「ちょっとま……」
だが、「待て」と言う前に、ケンシロウはアキトに抱き着き、シャツをめくりあげて今度はアキトの乳首にケンシロウの小さくて温かい舌が這い回り始めたのだった。
「ああっ! やべえ。もうイッちゃいそう」
アキトは気持ち良さのあまり、すぐにそう叫んだ。
「ええー? もうイッちゃうの? つまんない」
ケンシロウが口を尖らせた。
「ケンシロウと抱き合ってると、俺、もう我慢が出来なくなっちゃうんだ」
アキトは恥ずかしくなりながらも、正直にそう打ち明けた。
「アキトったら、変態!」
ケンシロウが悪戯っぽくアキトに笑いかけた。こういう表情が一つ一つアキトの性欲を嫌という程そそる。
「お前がエロいからだ」
アキトはケンシロウの身体に夢中でしゃぶりついた。
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