第9話 夜はいつも通り

 俺の為の小さなテーブルに、料理が並ぶ。サァリーは俺が子供だからと言って、決して料理も手を抜かない。


 今日のメニューはコーンシュのスープ、スビナーとミミー肉のパイ、俺がかみ切れるくらい柔らかなパン。飲み物は、さっぱりとしたレモネという果実水。

 コーンシュのスープは、コーンスープみたいな味で色は白色。スビナーは、ほうれん草みたいな野菜で、ミミー肉は火を通すと脂が抜けて、白身魚みたいにさっぱりとしている。柔らかいパンはフカフカとしていた。果実水は、レモン水みたいな味に、少しの甘みを感じるものだった。

 デザートで出てきたのは、ラスという小さな果実のシャーベットだった。ライムの柑橘系な香りと甘酸っぱい苺の味だった。

 全部美味しかった。サァリーは料理も得意で凄い。俺もそのうち、作れるようになるかな。料理も教えてもらおう!


 テーブルの端には寄せられた小皿が置いてあった。クルミのような、ナッツが入っている。俺はあまりナッツ系は好きな食べ物じゃないから、サァリーも出すことは無いけれど、アザミの為に用意してもらった。アザミは起きなかった。可哀想だったから起こさなかったけど、早く起きてくれないかな。


 食事が終わり、お風呂に入る。アザミとは一緒に入れないので籠はサァリーに預けておく。

 お風呂は、俺が溺れないように水深が低くなっている。タイル張りで、ちょっとした銭湯のようだ。勿論、一人で入れるので、サァリーは俺が出てくるまでお風呂場の外で待っている。

 石鹸は無く、特殊な香油で体を洗う。壁にシャワーのようなものがあり、宝石のような埋め込まれたスイッチを触るだけで俺の近くからお湯が降ってくるので、それで香油を洗い流す。それから、湯舟に入る。

 お湯の中には、今日の咲かせたお花が浮かんでいた。ラベンダー、アヤメ、他にも青い色系の花が浮かんでいて可愛い。

 ここで絶対に花を食べてはいけない。何故なら、サァリーは浮かべた花の枚数まで数えているので、もし一枚でも無くなったら俺は一人で入らせてもらえなくなるから。それは困る。ようやく、一人で入れる許可を貰ったのにそれは嫌だ。

 着替えの服は、肌触りの良いパジャマだ。つるりと滑らかで、肌に引っかかることは万が一にもないような感じ。凄く高いんだと思う。今日の色は薄い水色。

 丁度、パジャマに着替えたところでサァリーが入ってきて、俺を椅子に座らせる。魔法で髪を乾かし、香油を塗ってコーティングしてもらう。見えている範囲の肌には、ボディミルクのような白い液体をすり込まれる。グニグニとされているとなんか、調理されているみたい。


 お風呂から出たら今度は自分の部屋に向かう。部屋でサァリーが明かりを消してくれるまで、絵本を呼んで待つ。

 絵本は、沢山あり俺がその中でも好きなのは、妖精の国に子供が迷い込んで、夢のような一時を過ごす絵本と、勇者と聖女が妖精の手を借りて世界を救う絵本が好きだ。何回読んでも飽きない。

 ベッドの上にはアザミの寝ている籠が置いてあった。サイドテーブルにはアザミがいつ起きても良いように、ナッツが準備されていた。


 コンコン


 静かに過ごしていると、扉のノックされた。俺は返事をして、部屋の入室を許可する。サァリーだと分かっていても、こういうことはきちんとしないといけないんだって言っていた。


 サァリーは部屋に入ってきて、ベッドを整える。アザミが寝ている籠は、サイドテーブルの上に移動してもらう。


「さぁクーレ様、どうぞ」


 俺はのそのそとベッドの上に乗った。かけ布団をかけられて寝る準備が万端になる。


「クーレ様、おやすみなさいませ」

「うん、おやすみ」


 俺が返事をすると、部屋の明かりはゆっくりと消えていく。消えたのを確認してから、サァリーは静かに部屋を出ていった。


 部屋が暗くなると途端に、眠気が襲って来る。

 今日は色んな事があったから、疲れたな。明日になったら、アザミも起きるかな?楽しみだな!


 俺は明日に思いをはせて眠った。

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