第8話 黒の景色
雲が分厚くなったのか、より暗くなる。夜の暗さでも無いこの違和感にまた不安がよみがえった。
上を見上げた俺の不安が伝わったのか、サァリーは俺の頬を両手で包んで自分の方へと向かせる。
「大丈夫ですよ」
そうサァリーが言うと、周りが急に黒に染まる。手の先すらも見えないような黒を不思議に思う。
「今日は、明かりの魔法を使ってみましょうね」
サァリーは俺の頬から手を離した。それから、サァリーの周りからポワポワと白い色のシャボン玉のようなものがいくつも浮かんで辺りを照らした。花や噴水が浮かび上がる。幻想的だった。
「ふわぁ!」
輝く光景は不安を忘れさせた。
「お、僕にも出来る!?」
「フフ、出来ますよ。まずは、人差し指と親指で丸を作ってください。」
俺はサァリーの言うとおりに左手で丸を作った。右手は籠が落ちないようにしっかりと抑えておく。
「そこに息を吹き込んでください」
ふうと丸の中に息を吐くと、透明な何かが、ぷうと膨らんでいく。本当にシャボン玉みたいだ!
どんどん大きくなるシャボン玉に沢山空気を吹き込んで、膨らませていく。目の前には想像してたよりも数倍大きい、俺の顔くらいあるシャボン玉が出来ていた。息を吹き込むだけでも疲れるもんなんだな。
「上手に出来ましたね」
「うん!」
そのシャボン玉を触ると、本物とは違いプニュンとして割れずにフワフワと飛んで行ってしまった。感触はあまりなく、不思議だった。
良し、もっと作って見よう!
俺は小さいものや大きいものをポワンポワンと、いくつもの作った。こんな色のものがあったら良いなと思うと、その色に染まる。簡単だから、色も白い色だけじゃなく赤とか青とか色んな色で作ってみた。
小さい明かりを見てると、口に入れられるなと思ってしまう。それをサァリーに感じ取られて注意された。
「クーレ様、食べてはいけませんよ」
慌てて口を閉じる。でも、こんなに綺麗なのに本当に駄目なのかな?
俺は口を閉じたり、開けたりを繰り返す。その様子をまじかでサァリーに見られてフフと笑われてしまった。
「そろそろ大丈夫そうですね」
そう呟くと、サァリーは手で仰ぐ仕草をした。すると、今まで飛んでいたシャボン玉や黒色の景色が消えて、いつもの中庭になった。
黒い雲も消えて、太陽の光が差し込んでいた。光の色と差し込んでいる角度から夕方くらいだろうか。屋敷に帰って来たのは、お昼ごろだったから結構時間が経ったみたいだ。
「夕食にはまだお早いですが、食事にしますか?」
サァリーの言葉にお腹の虫がグゥと、いち早く返事をした。恥ずかしくなって、顔から火が出そうだ。
「フフフ、早くご用意いたしますね」
「あとね、アザミの分も!」
「かしこまりました」
俺の言葉にサァリーは頷いてくれた。
アザミは何を食べるんだろう?早く起きてくれないかなぁ。
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