第4話 初めての狩り
お花を咲かせる魔法を教えてもらってから1週間が経った。この魔法にも慣れてきて、中庭の花を全て、任せてもらえるようになった。
種は先にサァリーに撒いといてもらい、そこに水とお日様の布を被せていく。ふぅ。これでも、結構疲れるぜ。
俺はニョキニョキと咲き始める花を満足気に見る。
「凄く綺麗に咲かせられるようになりましたね」
「うん!」
サァリーの言葉に俺は嬉しくなり、ニコリと笑う。
「クーレ様、今日は一緒に狩りに行ってみましょうか?」
「えっ!本当!?」
「勿論です」
「やったぁ!」
狩りは危険とは言われて連れていってもらえなかったけど、今日、初めて連れて行ってもらえるんだ!これを喜ばずして何を喜ぶ!
サァリーは、狩りの為の準備をいそいそとし始めた。いつもはサッと行って来てすぐ帰って来るのに、俺がいるだけで準備が必要になるのか。
「良いですか?私の傍を離れないでくださいね」
「うん」
サァリーはメイド服のままだ。腰の細いベルトには鉈のようなナイフが差してあった。
俺の恰好はいつもより動きやすい服装で、背中にリュックを背負っている。
リュックの中身は小さなナイフと回復薬、非常食のクッキー。この3つだけだが、まだ小さな体には十分重い。
屋敷から少し離れたところで、サァリーはしゃがむ。
「ここで少し待っていてください」
サァリーに言われた通り、木と木が密集していて少し周りから見えにくい場所で座る。なるべく、彼女の邪魔にならないように両手で口を抑えて呼吸も小さくする。
ギュゥッギュゥ
まるで縄を締めるときのような音が聞こえた。その数十秒後、土の中からまるでヤツメウナギに毛が生えたような獣が現れた。
それは、サァリーを襲った。しかし彼女は横に移動し避けて、何の躊躇もなくそれの尻尾のような場所を掴んで逆さづりにし、頭の近くグッと左手で抑える。
「クーレ様、こちらにいらっしゃってください」
俺はそろそろとサァリーに近寄る。それはギーっと叫んで、サァリーから逃げようと暴れていた。普通に鋭い口が怖い。
「大丈夫です。触ってみてください」
サァリーの言葉を信じて、それを触ってみる。意外にふわっとしてた。見た目はチクチクしそうな毛並みなのに。
「この魔獣はミミーと呼ばれています。ミミーは害獣です。ある程度、数を減らさないと森が枯れます。時々こうして、血を求めて動物達を襲うことがあるので注意が必要ですね」
まぁ、この見た目だし、襲うだろうな。歯がすごいもん。でも、こいつどうすだろうか。毛皮でも売るのかな?ふわふわしているし。
さわさわとミミーを触っていると
「ミミーの肉は美味しいんですよ」
その言葉に俺は目を丸くして、ミミーを凝視する。
え、こいつ食うの?食えんの?
「まずはこうして捕まえてから、頭を落とします」
そういって、サァリーは尻尾を掴んでいる手を放す。頭を上の方に持っていってから、掴んでいる下側をナイフで切った。頭を切り離されたミミーの体は地面に落ちて、ピクピクと動いていた。キモい。
サァリーは掴んでいた頭をポイッと捨てた。
「まず、このミミーの肉と皮の間に手を入れます。皮を掴んで尻尾の方に引っ張っていくと、すんなり剥けます」
にゅるにゅると皮が剥けていくと、ピンク色の肉が見えてきた。
「尻尾ところまで皮を引っ張っていき、ここで切ります」
ざっくりと、サァリーは尻尾を切り落とした。なるほど、尻尾は皮ごと切るのか。
「ミミーは死んでから早く皮を剥がないと、臭みがまして食べられなくなります」
サァリーはミミーの肉を持ち上げ、ふぅと透明な水色の息を吹きかけた。冷たい風が吹き抜けて、肉についた土などを落としていった。目に見えて、肉の光沢が増した。そして、器用に肉を切り落とし、俺の前に突き出した。
「食べて見てください」
「うん!」
両手でその肉を貰い受けた。見た目は、脂が乗っていてつやつやしている。俺は、その肉をパクリと食べる。
「おいしい!」
簡単にいうなら、大トロだ。それでいて、魚の生臭さは無く、柔らかくてとろけそうで脂がたっぷりと乗っている。醤油とわさびが欲しくなった。
いつもはサァリーの料理はさっぱりしているものが多いから、この脂たっぷりはすごく嬉しい。
俺は、最初に貰った肉だけでお腹がいっぱいになり、残った肉は全てサァリーが食べた。ミミーは骨は無いようで、完食したら何も残らなかった。
「これからはミミーを倒せるように練習しましょうね」
「うん!」
でもこいつを毎日食べてたら胃がもたれそうだ。
ミミー狩りの後は、ピクニックをしてから帰った。クッキー美味しかった!
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