第七十一話 エリゼと地下の地下②

「これ、この地面は……舗装された道?」


 と、思わずつぶやいてしまうエリゼ。

 それほどに彼女は、現在彼女の前にある光景が信じられなかったのだ。


(ありえないわ。だってここは地上からずっと下——上の地面が崩れて落っこちてきた場所なのよ?)


  要するに本来ならば、どうひっくり返っても来られない場所なのだ。

 それなのに、そこをどうして舗装する必要があるのか。


「……」


 疑問点は多々ある。

 しかし、これで希望ができたことも確かだ。

 その理由は簡単。


(舗装されているということは、遥か昔は使われていたということよ)


 ならば、どこかに上へ繋がる道がある可能性がある。

 それならば最悪のパターン——上に戻れず、永久に地下深くで息絶える、なんて事は避けられる。


(現状まだ『かもしれない』だけれど、希望がないよりはマシね)


 それに帰れるのならば、早く上に帰り。

 クレハとソフィアの二人に合流しなければ二人が危険だ。

 先も考えた通り、あの二人はモンスターを倒せる力を持っていないのだから。


(私のゾンビが上に残っていてくれているはずだから、肉壁くらいはしてくれるでしょうけど……)


 それもあまり期待しない方がいい。

 ジャイアントスネークゾンビはともかく、ゴブリンゾンビでは大型モンスターには確実に敵わない。


「まぁ、ここに居ても仕方ないわね」


 などなど。

 エリゼはそんなことを呟いたのち、一人薄暗い地下を歩き始めるのだった。


 ……。

 …………。

 ………………。


 さてさて。

 そうして時は十数分後。

 現在。


「なによ、これ……」


 エリゼの目の前には、これまで以上に信じられないものがあった。

 それは——。


「どうしてこんな扉がここにあるのよ」


 上でエリゼが破壊した扉。

 あれよりも遥かに立派で堅固そうな大扉だ。

 しかも、こちらの扉は上のものとは大きく異なる点がある。


「薄く、発光している?」


 この光は覚えがある。

 エリゼが魔法を使う際に放たれる光だ。

 要するに。


「魔法の力によって守られている?」


 いったいいかなる原理で、扉に魔力を宿らせているのかは不明だ。

 しかし、相当大切なものがこの奥に眠っているというのはわかる。


 こういう時はあれだ。

 とりあえずすることは決まっている。


「攻撃魔法……」


 と、エリゼはゆっくりと片手を扉へと向ける。

 そして。


「『ファイア』!」

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