第七十話 エリゼの地下の地下

「っ」


 と、エリゼは頭部の痛みに目を覚ます。

 いったい何がどうなったのか。


 ガーゴイルのせいで地面が崩れ、落下したのは覚えている。


 そうだ。

 あのあと、エリゼは剣を壁に刺してなんとか身体を減速させようしたのだ。


(気絶していたみたいだし、頭も痛い……それに)


 周囲を見回しても真っ暗だ。

 まさかエリゼ、結局死んだなんてことは。


「…….」


 やばい。

 普通に怖くなってきた。


(と、とりあえず確認! 周りの確認よ! えっと、こういう時は……)


 と、エリゼは目の前に手をかざす。

 そして、なるべく出力を抑えるようにイメージし。


「攻撃魔法『ファイア』!」


 すると。

 ボッとエリゼの手に灯る炎。

 

(レベルが上がったから、精密なコントロールが出来るはず……そう踏んでやったけれど、成功したみたいね)


 問題はあれだ。

 常に『ファイア』している状態のため、長時間使用すると頭痛が始まる恐れがある。


(まぁ、レベルも上がっているからその辺も伸びていそうだけれど)


 とりあえず検証は後だ。

 エリゼは炎を使って、周囲を見回していく。

 すると見えてきたのは。


「ガーゴイルの死体……落下の衝撃で死んだみたいね」


 あの外皮のガーゴイルが落下死するとは、上までは相当な高さに違いない。

 現に上を見ても全く先が見えない。


「クレハの剣も折れてしまっているわね」


 けれど、この剣のおかげでエリゼは助かったのだ。

 最後の最後で折れてしまったとはいえ、途中まで持ち堪えてくれた。

 だからこそ、エリゼはガーゴイルと同じ末路を辿らずに済んだのだ。


「でも、今の問題が解決したわけじゃないわね」


 エリゼは一人そんなことを呟きながら、額へと手をやる。

 すると。


 ヌルッ。


 と、指先の妙な感覚。

 見れば、めっちゃ出血してた。

 エリゼ、想像以上にギリギリの落下だったに違いない。


「こういうときに便利ね、回復魔法『ヒール』!」


 と、エリゼが言った瞬間。

 彼女の傷はみるみる治癒していく。


「あとはこのガーゴイルをゾンビ化させれば、飛んで元いた場所に戻れる……のだけれど」


 きっとそれは無理に違いない。

 ガーゴイルさん、バラバラだ。

 硬い体が仇になったに違いない。


 現にエリゼが生死を確認したガーゴイルなど、頭の4分の1だけしかパーツを発見出来なかったのだから。


(いくら何でも、ここからのゾンビ化は無理よね?)


 それにそもそも、ゾンビ化して若干低下した知性で飛べるか問題もある。


 などなど。

 エリゼはガーゴイルの死体を見下ろしていた事で、とあることに気がつく。

 それは——。


「これ、この地面は……舗装された道?」

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