第七十二話 エリゼと地下の地下③

「攻撃魔法『ファイア』!」


 直後。

 エリゼの手のひらから飛び出した火球は、凄まじい勢いで扉へと直撃する。

 同時、舞い上がる爆炎……だがしかし。


「なっ!?」


 扉は健在だ。

 傷どころか汚れ一つ付いていない。


 魔法で防御されていることから、それなりの強度をこの扉が持っていると予想はしていた。

 しかし、まさかこれほどとは思わなかったのだ。

 もっとも。


「諦めたりはしないけれどね」


 だって、今のエリゼには先に進む以外に道がない。

 ここで諦めれば、永遠にこの地下で過ごすことになる可能性が高いのだから。


(とりあえず、一撃でダメなら連撃だけれど……低火力を何度もぶつけても、あまり効果はなそうね)


 ならばすることは一つ。

 などと、エリゼはそんなことを考えたのち。


「補助魔法『ストック』!」


 低火力でダメなら。

 一撃で吹き飛ばせる火力を出せばいい。


『ファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイアファイア』


 と、エリゼはひたすらに心の中で唱えまくる。

 そうしてしばらく。


 ズキンッ。


 と頭痛が来たタイミングで唱えるのをストップ。

 若干吐き気もきているが、まだまだ問題はない。


(レベル上昇のおかげで、頭痛がくるまでの限界値もやっぱりかなり上がっているわね)


 などなど。

 エリゼはそんなことを考えたのち、再び扉へと片手をかざす。

 そして……。


「補助魔法『リリース』……攻撃魔法『ファイア』!」


 と、エリゼが言った瞬間。

 エリゼの手から放たれたのは、先ほどまでとは比べ物にならないほど巨大。

 なおかつ灼熱の大火球。


 それはエリゼのかざした片手を焼きながら、凄まじい速度で扉へと直撃。

 これまた凄まじい爆炎を巻き上げながら、扉を完全に吹き飛ばす。


「ちょっと威力を高くしすぎたかしらね……焼かれた腕が痛いわ、これ」


 とりあえずあれだ。

 回復魔法『ヒール』と、エリゼは自らの腕を治すのだった。

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