第六十八話 VSガーゴイル

「私のレベルの糧にしてあげる」


 言って、エリゼは地面を蹴り付け、一気にガーゴイルの方へと疾走する。


 (相手は五匹……強さがわからない以上、連携を取られたらこちらが不利よ)


 ならば、先行して叩く。

 五対一よりも、一対一を五回の方が楽に違いないのだから。


 などなど。

 エリゼがそんなことを考えている間にも、ガーゴイルのうち一体が間合いに入る。

 となれば。


「剣技『一閃』!」


 言って、エリゼはスキルによって強化された斬撃を放つ。

 その一撃は凄まじい速度で、ガーゴイルの首へと吸い込まれて——。


 ガンッ!


 と、聞こえてくる音鈍い音。

 同時、エリゼの手に伝わってくる痺れるような感覚。


「っ!」


 と、エリゼは思わず舌打ちしながら飛び退る。

 その理由は簡単だ、


(ガーゴイル……っ。剣を弾くって、なんていう硬さなのよ!?)


 見た目からもわかる通り。

 ガーゴイルは石像のような魔物。

 けれどもまさか、外皮がこれほどの硬度を誇っているとは思わなかったのだ。


(でも、完全に無傷ってわけじゃなさそうね)


 たしかにエリゼの剣は弾かれた。

 けれど、先ほどの斬撃により——ガーゴイルの首には深い傷が出来ている。


 しかし、やはり斬撃による攻撃は正解とは言い難い。

 その理由もまた簡単だ。


(一度斬っただけなのに、剣が見てわかるほどに刃こぼれしているわ)


「エリゼ!」


 と、考えている中に聞こえてくるのはクレハの声。

 同時、エリゼのすぐそばの地面に突き刺さる剣。


 間違いない。

 エリゼの剣が刃こぼれしたのを察して、クレハがすぐさま新しい剣を作ってくれたのだ。


「本当にありがとう、クレハ!」


 言って、エリゼは持っていた剣を投げ捨て、新たな剣を掴み取り——再び疾走。


 すると再び間合いに入ってくるガーゴイル。

 けれど今回は一体ではない。


(時間をかけすぎたわね!)


 目の前にいるのは二体のガーゴイル。

 首には傷を負っている先ほどの個体と、合流してきた個体だ。


(でもまだ二体一! これ以上不利の目を増やさないためにも、先の一体は確実に倒す!!)


 方法はある。

 剣が効かないのなら魔法だ。


(剣で相手の攻撃を牽制しつつ、特殊魔法『触手』による打撃と、ゼロ距離の攻撃魔法『ファイア』で仕留める!)


 エリゼはそんなことを考えたのち、片手を相手へと向け——。


 ミシッ。


 と、エリゼの思考を裂くように聞こえてくる不穏な音。

 まさにその直後。


 ドゴォンッ!!


 と、聞こえてくるのは凄まじい音。

 同時に舞い上がる凄まじい砂埃。


「!?」


 いったい何が起きているのか。

 砂埃のせいで前が見えない。


(まさか気がつかないうちに、ガーゴイルに何かやられ——)


 と、再び途切れるエリゼの思考。

 時を同じくして、エリゼの身体を浮遊感が掴むのだった。

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