第六十五話 エリゼは移動中②

 時はあれから十数分後。

 現在、エリゼ達は再びジャイアントスネークゾンビに乗って、目的地である地下山道を目指していた。


 さてさて。

 件のゾンビ化についてだが。


(やっぱり、ソフィア単体でモンスターをゾンビ化させるのは無理だったわね)


 ソフィアでも死んでいるモンスターなら、ジャイアントスネークの様にゾンビ化させられる。

 しかし、生きているモンスターとなると『モンスターが持つ『不老不死とも言える無敵性』によって、ゾンビ化がキャンセルされてしまうに違いない。


 そうして更にわかったことが一つ。


(私なら生きているモンスターも『ゾンビ化』させることができる)


 などなど。

 エリゼはそんなことを考えたのち、チラリとジャイアントスネークゾンビの最後尾を見る。

 するとそこに居るのは。


「gg〜……」


「ggggy?」


「ん……ゾンビが増えた」


 と、みんなで何かを話しているゴブリンゾンビ達。

 そしてそれを観察しているソフィア。


 要するにそう。

 先のゴブリン達をまとめて全員、エリゼはゾンビ化させ仲間にしたのだ。


(間違いなく特殊魔法『ゾンビ化』は強力なスキルだけれど、大きな問題点もあるのよね)


 それはそのまま、現在最後尾で繰り広げられている光景なのだが。


 圧倒的人口密度。


 否。

 圧倒的ゴブリン密度なのだ。

 この調子でゾンビを増やしていいったら、とんでもないことになる。


「エリゼ……悩み事?」


 と、いつの間にやらそばに来ていたのはソフィアだ。

 エリゼはそんな彼女へと言う。


「ちょっとあのゴブリン達をどうするかについてね。ほら、これからもゾンビを増やすとなると大所帯になってしまうでしょ?」


「エリゼ、見て」


「見てって…….何をかし——」


 と、エリゼの言葉は思わず途切れる。

 その理由は簡単だ。


 何と。

 ソフィアの肘から先が消えていたからだ。


 厳密にいうのなら、ソフィアの肘から先——それが謎の闇色の靄に包まれているのだ。


「ちょ、なによこれ! 大丈夫なの!?」


「ん……大丈夫」


 と、エリゼに対してそんなことを言ってくるソフィア。

 彼女は闇色の靄から手を引き抜きながら、再びエリゼへと言葉を続けてくる。


「なんかしまえる」 


「しま、える?」


「ん……自分の身体、この靄の中にしまえる。あっちのゴブリンゾンビ達も、できる」


「…….」


 と、ここでエリゼは思い至る。

 それはセントポート地下水路で出会った騎士甲冑のゾンビだ。


(そういえば、あのゾンビもいきなり出てきたけれど。ひょっとして隠れていたのではなく、この闇色の靄の中からいきなり出てきた?)


 要するに。

 ある一定の力を超えたゾンビは、このように姿を消したり現れたりする力を持っている可能性が高い。


 まぁそれはともかくだ。


(私がゾンビ化させたゾンビが、全員この力を持っているのなら)


 大所帯問題は解決する。

 だって、普段は闇の靄の向こう側に、姿を消してもらっていればいいのだから。

 もっとも。


「ソフィア。あなたは常に私の側に居てね?」

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