第六十四話 エリゼは移動中

「すごい! クレハ達、モンスターに乗ってる!!」


 と、聞こえてくるのはクレハの声だ。

 彼女はジャイアントスネークの頭部に座り、きゃっきゃっと楽しそうにはしゃいでいる。


 要するにそう。

 現在、エリゼ達は先ほど倒してゾンビにした、ジャイアントスネークを乗り物として移動しているのだ。


(快適、とはこのことね。鞍も何もないから、時々滑り落ちそうになるのがたまに傷だけれど)


 実際、ついさっきクレハが落下したばかりだ。

 地面に激突する直前に、ソフィアが救出することに成功したが。


 さてさて。

 こうして勝手に進んでくれる足を手に入れた以上、エリゼには一つ気になることがある。


 それは、ソフィアがこのモンスターをゾンビにしたことで思いついたのだ。


(モンスターを倒せるのは私だけ……というのは当然なのだけれど)


 これワンチャン。

 今のソフィアならばモンスターを倒せるのでは?


 なんせ、エリゼはモンスターの死体に噛み付くことにより、そのモンスターをゾンビ化させた。

 ならば。


(生きているモンスターに噛み付けば、そのモンスターをゾンビにできるのではないかしら?)


 厳密にいうのなら『倒せる』ではなく、『ゾンビに出来る』だが。


(ただ、そもそも攻撃が通らない可能性があるのよね)


 モンスターについて研究したことなどないため、厳密にどういう判定になるかはわからない。

 けれど。


 モンスターが『エリゼ以外の攻撃に対して完全無敵』ならば。

 万が一噛めてもソフィアの『噛んだ相手をゾンビ化』が無効化される可能性が高い。


「……エリゼ、考えごと?」


 聞こえてくるのはソフィアの声だ。

 見れば、すぐ近くで彼女がひょこりと首を傾げてきている。

 エリゼはそんな彼女へという。


「ソフィア、よかったらでいいのだけれど。次にモンスターを見つけたら、ちょっと試したいことがあるの」


「?」


「私がモンスターを無力化させるから、そのモンスターに噛みついて欲しいのよ」


「ん……わかった」


 と、こくりと頷くソフィア。

 などなど、そんな話をしている間にも。


「シュルルルルル」


 と、聞こえてくるのはジャイアントスネークゾンビの声。

 見れば、進行方向にゴブリンが数匹歩いているのだ。


「ちょうどいいところに獲物がきたわね」


 エリゼはそんなことを言ったのち、腰の剣へと手をかけるのだった。

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