第六十二話 モグモグパクパク

 プスプス。


 と、煙と香ばしい匂いを漂わせているのはジャイアントスネーク……の死体だ。


「ありがとう、ソフィア。あなたのおかけで楽に仕留められたわ」


「ソフィアはすごい! 騎士甲冑を着てあんな優雅に剣を振って……まるでお伽噺の騎士様みたいだ!」


「……」


 と、エリゼとクレハの言葉に対し無言なソフィア。

 もう無言モード……スリープモードに入ってしまったに違いない。


(まぁ、こればかりは仕方ないわね。早く私自身のレベルを上げて、ソフィアを自由に喋れる様にしてあげないと)


 さてさて、それはさておきだ。

 と、エリゼはプスプスと煙をあげるモンスターの方を見る。

 すると。


「あのモンスターが気になるのか?」


 と、言ってくるのはクレハだ。

 エリゼはそんな彼女へと言う。


「ちょっと試したいことがあるのよ」


「試したいこと?」


「実はゾンビマザーを倒した時に、対象をゾンビとして使役するスキルを手に入れたの」


「クレハわかった!! あのモンスターをゾンビに出来るか試すんだな!?」


「ええ、そういうことよ」


 厳密に言うと。

 人間には通じたが、モンスターにも通じるのか試してみたいのだ。

 と、エリゼがそんなことを考えた。

 まさにその時。


 テクテク。

 テクテクテク。


 と、ジャイアントスネークの死体へと近づいていくのはソフィアだ。

 彼女は死体の前で立ち止まると、ボーっとその死体を見つめ続けている。


「えっと、ソフィア?」


 と、エリゼが話しかけた瞬間。

 それは始まった。


 かぷっ!


 と、綺麗な音を立ててモンスターの死体へ噛み付くソフィア。

 エリゼはそんな彼女へとと思わず言う。


「ちょ……っ、何してるのよ!?」


「モグモグ、パクパク」


「やめなさい! ぺッしなさい! ばっちーわ! それはモンスターなのよ!?」


「パクパクパクパク、モグモグモグモグ」


「こら、ソフィア!!」


「パクパクパクパクパクパク」


 と、全く止まる様子のないソフィア。

 そうして仕方なく待つこと数分。


「ん……満足」


 と、そんなことを呟きエリゼの方へとやってくるソフィア。

 エリゼはそんな彼女へと言う。


「いきなりどうしたのよ? あれはモンスターよ! しかも蛇の! 毒があったら大変よ!!」


「……」


「あなた、都合が悪い時に黙ってたりしてないわよね?」


「……」


 と、なんだかエリゼから目を逸らしている気がするソフィア。

 まぁあまり突っ込まない様にして——。


「エリゼ、大変だ!!」


 と、エリゼの思考を断ち切る様に聞こえてくるのはクレハの声。

 彼女はそのままエリゼへと言葉を続けてくる。


「モンスターだ!」


「新しく出たの!?」


「違う! さっきの蛇のモンスターがまだ生きてる!!」


「っ!?」


 と、エリゼが先ほどのモンスター——ジャイアントスネークの方へと視線をやった。

 まさにその瞬間。


 大きな影がエリゼの方へと迫ってくるのだった。

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