第六十一話 エンカウント②

 ダッ!


 と、蛇型モンスター——ジャイアントスネークめがけ、一気に突っ込んでいくのはソフィアだ。

 エリゼのゾンビと化している彼女は、それ相応に凄まじい速度だ。


(私に匹敵……とまではいかないけれど、並の人間じゃ到底出せない早さね)


 などなど。

 エリゼがそんなことを考えている間にも。


 ザッ!


 と、ソフィアは大きく一歩を踏み込み立ち止まる。

 見てわかる——彼女はモンスターを間合いに捉えたのだ……しかし。


「シュルルルルルルッ」


 と、不気味な声をあげるジャイアントスネーク。

 やつはソフィアに劣らない速度で態勢を変える。

 そして、奴はまるでその体をバネの様に使い——。


 ヒュッ!


 と、鋭く尖った尾の先端でソフィアへと攻撃を繰り出す。

 まずい。


(ソフィアは攻撃態勢に入ってる! 今からじゃあの攻撃は避けられないわ!)


 間に合え!

 と、エリゼはソフィアを救うため、手を翳し特殊魔法『触手』を発動させようとした。

 まさにその直前。


 ダッ!


 と、天へと舞い踊るソフィアの身体。

 避けたのだ。


 攻撃態勢のまま、上空へとジャンプ。

 ソフィアの真下を通るのは、モンスターの太く長く鋭い尾。


 まさしくギリギリ。

 人間では到底不可能な態勢での回避。


「っ!」


 と、そこでエリゼそもそもなことに気がつく。

 今のソフィアは人間ではない。


(筋肉の動きとか、骨の構造なんて詳しくないけれど……今のソフィアはきっとそういうのを無視して動けるんだわ)


 身体を無理矢理動かし壊れても、何もダメージがないのだから。

 ゾンビ故、エリゼの魔力を食らえば自然回復するに違いないのだから。


 要するに無敵。


 けれど、それでもなおソフィアはモンスターを倒す手段を持ち合わせていない。

 いったいどうするつもり——。


「……エリゼ」


 と、聞こえてくるソフィアの声。

 見れば、彼女は凄まじい体幹の良さでモンスターの尾の上へと着地。


 ソフィアはそのまま尾の上を駆け抜け跳躍——モンスター本体を飛び越し、その背後へと着地。


「ん…….パス」


 ドゴォッ!!

 と、ソフィアの声と共に聞こえてくるの凄まじい音。

 ソフィアが剣でモンスターを殴打したのだ。

 結果。


 エリゼの方へと吹っ飛んでくるモンスター。

 しかも隙だらけだ。


「なるほど、ね」


 と、エリゼはようやく理解する。

 ソフィアはエリゼがモンスターを楽に倒せるのに、お膳立てをしてくれたのだ。

 本当にいい子だ。


 そうとわかれば、エリゼがやることは一つだ。

 彼女は飛んでくるモンスターへと手を翳し。


「あとは任せなさいな」


 言って、心の中で呟くのだった。

 攻撃魔法『ファイア』と。

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