第五十七話 本当の復讐②

「一緒に復讐をしましょう?」


 言って、エリゼはソフィアの死体を抱きしめる。

 そして——。


「特殊魔法『ゾンビ化』」


 と、エリゼは先程手に入れたばかりのスキルを発動させる。

 ぶっつけ本番だが、その効果はまず間違いなく『ゾンビを作成する』だ。


(ゾンビマザーから手に入れたスキルだもの……それ以外考えられないわ)


 そして、ゾンビマザーのスキルというならば、一つ思い当たることがあるのだ。


 作成されたゾンビはその全てが知能がなく、どんどん腐敗していくものとは限らない。


(作成したゾンビのポテンシャルが、作成者の力量に関係するなら……)


 ひょっとしたら。

 もしかしたら。


 などなど。

 エリゼはそんなこと考えながら、ゆっくりとソフィアの死体から離れる。

 その直後。


 ピクッ。


 と、わずかだが確かに動くソフィアの死体。

 やがて彼女は徐々に体の動かす範囲を増やしていき——。


 ムクリッ。


 と、ソフィアは上半身を起こしエリゼを見てくる。

 エリゼはそんな彼女へと言う。


「ソフィ、ア?」


「……」


「ねぇ、聞こえているの?」


「……(こくり)」


 と、わずかだが頷いてくれるソフィア。

 けれどまだだ。


 まだ全然、生前のソフィアには及ばない。

 理由も察しがつく。


(私の力量不足……ってことよね)


 けれど、ある意味それは朗報だ。

 ゾンビ化させたら、見るからにゾンビになったとか。理性が完全に失われたとか。

 そんな状態なら打つ手なしだった。


(でもこれなら、私の力量不足をどうにかすれば何とかなるわ)


 現に今でも、ゾンビマザーが作ったゾンビよりも人間らしい。


 ゾンビマザーの最高傑作——騎士甲冑ゾンビは、喋りはしたものの知性はあまり感じなかった。

 けれどこのソフィアは。


「?」


 と、エリゼが見つめていると首を傾げたりしてくれる。

 確実に知性らしきものを感じるのだ。


(ということは、力量をあげればゾンビはより人間に近づくはずよ)


 レベルだ。

 エリゼのレベルを上げまくれば、必然エリゼの力量は上がる。

 そうすれば、ソフィアは最終的に人間とほぼ変わらない状態に戻れる。


「全員糧にしてやる」


 と、エリゼは手を握りしめる。

 考えることは一つ。


 帝国への復讐。


 帝国がモンスターと繋がっているのなら、それこそ好都合だ。

 全滅させて、ソフィアを人間にする糧にする。


「もう少し待っていてね、ソフィア」

 

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