第五十六話 本当の復讐
気がつくと、エリゼは街へと飛び出していた。
そして現在、彼女は街中を走っているのだが——。
「っ……ソフィア、どこにいるの!?」
と、エリゼは必死にソフィアを探す。
けれど彼女を見つけることはできない
エリゼが視線を左右にやり見つけられるのは——。
住民の死体。
おびただしい量の死体。
例の光に胸を撃ち抜かれたに違いない。
全員が心臓を破壊され、息絶えている。
見つからない。
見つからない。
死体しか見つからない。
(まさか、まさかソフィアも……)
いや、そんなわけない。
ソフィアが死ぬなどありえない。
でもひょっとしたら。
などなど。
エリゼはひたすらにそんな思考のループに陥りながらも、必死に足を動かし続ける。
意味がわからない。
どうしてこうなった。
あの悪魔は帝国がどうのと言っていた。
帝国はそもそもモンスターと繋がっていたのか。
だとしたらゾンビマザーも帝国の仕込みだったのか。
帝国が『ゾンビマザーを召喚できる何か』を、ソフィアの父にそうと気づかず渡るようにしたのか。
エリゼがゾンビマザーを倒したから、帝国はこのような手段に打って出たのか。
だとしたら。
もしそうだとするなら。
(私のせい、なの?)
わからない。
何もわからない。
分かりたくない。
「……」
気がつくと、エリゼの足は停まってた。
そして、目の前には一人の少女の死体が転がっている。
わかりたくない。
これが誰なのかわかりたくない。
何も考えたくない。
「バカだ……私」
復讐が楽しい。
復讐する口実を探す旅に出よう。
馬鹿すぎる。
そんなことを考えていた、過去の自分が愚かしい。
エリゼは大切なことを失念していた。
それは。
復讐する口実を見つけるということは、自分に何かしらの痛みや喪失を伴うということだ。
(自分からそんなの探してどうするのよ)
だってそれは、自分の大切なものを傷つけられるということだ。
大切なものは単なる物である時もるある。
それならばまだ取り返しはつく。
けれど命ならば?
例えば傷ついたのがクレハだったならば?
例えばそう……今のように。
「ソフィア……ごめんなさい」
言って、エリゼは少女の死体に——ソフィアだったものに覆いかぶさるようにへたり込む。
(ねぇソフィア。私はもう復讐を娯楽にしたりしない)
そもそもそんな生温い復讐などゴミだ。
ここからは本当の復讐。
楽しみなど何もない。
(殺す)
帝国の奴らを全員。
全て平等に滅ぼす。
「私は私の大切なものを傷つけるやつを、絶対に許さない……だから、ねぇソフィア」
言って、エリゼはソフィアの死体を抱きしめる。
そして。
「一緒に復讐をしましょう?」
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