第五十四話 エリゼはさらに強くなる

(さぁ、ゾンビマザーを倒したことでステータスはどうなっているかしらね)


 と、エリゼは自らのステータスを開く。

 するとそこにあったのは。


レベル12

 剣技:一閃

 攻撃魔法:ファイア

 回復魔法:ヒール

 補助魔法:ストック、リリース

 特殊魔法:触手、ゾンビ化


(やっぱりきたわね)


 と、エリゼが注目したのは『ゾンビ化』のスキルだ。

 これでようやく確信できた。


(『マザー種を倒すと、そのマザーが使っていた主力技がスキルとして手に入る』という、私の予想は正しかったみたいね)


 なんせ、この『ゾンビ化』こそゾンビマザーが使っていたものに違いないのだから。


 けれどこれ、使い道がない気がする。

 その理由は簡単だ。


(ゾンビ化ってこれ、生きてる人間か死んでる人間をゾンビにするってことよね)


 なんかこれ、エリゼの手でモンスターを生み出している感がする。


(さすがに生み出したゾンビのコントロール権は得られるでしょうけど、躊躇いがあるのよね)


 人間をモンスターにする。

 それは中々の罪な気がするのだ、


(でも気になることもあるわ。例えばゴブリンとかのモンスターを、このスキルでゾンビ化させることが出来るのかとか)


 モンスターをゾンビ化させるのならば、特に問題はない気がする、

 というかむしろ。


(凶暴なモンスターをゾンビにして、私のコントロール下に置くのはむしろいいことよね?)


 そう考えると、なんだか楽しみになってきた。

 この『ゾンビ化』が、モンスターに効くのかどうか早く試してみたい。


 となれば善は急げだ。

 エリゼは「よし」と一言、いい子に待っているクレハへと言う。


「騒ぎもひと段落したみたいだし、私はこれから新しく手に入れたスキルを確かめに行くわ。よかったらクレハも——」


 瞬間。

 エリゼの言葉を断ち切るように、遥か上空で弾ける光。


「っ!?」


 同時、エリゼへと襲ってくるのは圧倒的なプレッシャー。

 間違いない——先ほど感じたばかりだからわかる。

 これは死の気配。


 要するに。

 このままでは、死ぬ。


「クレハ!!」


 言って、エリゼはレベル12の力を全開放し、クレハを抱き抱えながら、転がるようにその場から退避する……直後。


 カッ!


 と、先ほどまでエリゼとクレハがいた場所に降り注いだのは、細く凶悪な闇色の光。


「痛たた…..どうしたんだ、エリゼ?」


 と、何が起きたか気がついていない様子のクレハ。

 エリゼはそんな彼女へと言う。


「怪我はない? 大丈夫!?」


「大丈夫、だけど……なにかったのか?」


「わからない、わ」


 今の攻撃は何者によるものなのか。

 全くわからない。


(ゾンビマザーは確実に無関係よ。だって私が『ゾンビ化』のスキルを得ている以上、ゾンビマザーは確実に死んでいるもの)


 とすると、いったい誰がエリゼとクレハを狙ったのか。


 などなど。

 エリゼがそんなことを考えていた。

 まさにその瞬間。


「?」


 今何か、上空を横切った気がするだ。

 いや、間違いない。


(本で見たわ——コウモリを人間に近づけたかのような外見)


 あれはたしか悪魔。

 その中でも下位のレッサーデーモンというモンスター。


 エリゼが知る限り、あのモンスターはあんな凄まじい攻撃をしてくるようなモンスターではない。

 せいぜい物語の中で、勇者にやられる雑魚敵ポジションだ。


(でも、タイミング的に確実に何かかかわっているわね)


 エリゼはそんなことを考えたのち、上空のレッサーデーモンへと手をかざすのだった。

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