第五十三話 終息
あれから数分。
エリゼはワンチャン、ゾンビマザーが復活する可能性を考え、油断せず周囲を確認していた。
結果、ゾンビマザーが蘇ることはなかった。
(まぁ、今の私にあれ以上の攻撃はなかったから、あれで生きていたら負けていたのだけれど)
さて、エリゼにはまだするべきことがある。
それは——。
「え、エリゼ! 大変だ!!」
と、聴こえてくるのはソフィアの手伝いをしているはずのクレハの声。
見れば、彼女が慌てた様子でエリゼの方へと駆けてくる。
そんな彼女はエリゼのそばで立ち止まると、そのまま言葉を続けてくる。
「ゾンビだ! ゾンビが!!」
「ゾンビ? まさか街にもゾンビが出たの!?」
「そうだけど違うんだ!!」
「?」
「えっと、え〜っと!」
と、慌てた様子のクレハ。
彼女は身振り手振りで、エリゼへと街の現状を説明してくる。
その話をまとめるとこんな感じだ。
なんでも少し前。
時間にしてエリゼがゾンビマザーを倒した頃。
街で住民たちに異変が起きたそうなのだ。
その異変とは——。
住民の一部が突如として倒れた。
しかもその住民はすでに死んでいたそうな。
なおかつ。
「急激に腐敗し始めた、のね?」
「そうだ! そういうことだ!」
と、エリゼの言葉に対し言ってくるクレハ。
要するにこれ、住民の中にもゾンビが混じっていたに違いない。
(危なかったわね。余裕で地上にもゾンビを待機させていたじゃない……)
完全に想定外だったが、何事もなかったのならよかった。
にしても、どうしてゾンビ達は突如ただの死体に戻ったのか。
考えられる要因はやはり——。
(ゾンビマザーが死んだからかしらね)
ゾンビを作り出した存在が死ねば、作られたゾンビは死ぬ。
実にシンプルだ。
(それによかったわ。私がするべきだったことも、勝手に解決したみたいで)
というのも実はエリゼ。
この後、地下水路のゾンビを殲滅する予定だったのだ。
けれどこの様子では、地下水路のゾンビはすでに死体に戻っているに違いない。
(死体の処理くらいは、住民たちに任せてもいいわよね)
あと気になることといえば。
と、エリゼはクレハへと言う。
「ソフィアは大丈夫なの?」
「大丈夫だ! 最初にゾンビのことを話したとき、少しだけ疑う人も居た! でも今では本当のことを言ってたって、英雄みたいに扱われてる!」
「そう、ならよかったわ」
これで心配事は消え去った。
無論、ソフィアに王のことを伝えなければないないという、メンタル的に辛いことはあるが。
ひと段落はひと段落。
少し休憩しても文句は言われないに違いない。
それに地味にエリゼ、先程から気になっていることがあるのだ……。
(さぁ、ゾンビマザーを倒したことでステータスはどうなっているかしらね)
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