第五十話 VSゾンビマザー

「ソフィアのお父さんを殺した罪、償ってもらうわ」


 言って、エリゼは剣を構える。

 そして——。


 ダッ!


 と、床を蹴って疾走。

 エリゼは凄まじい速度でゾンビマザーの元へと近づいていく。


(行ける……! これがレベル10の力!!)


 と、エリゼがそんなことを考えた。

 まさにその時。


 ゴォ!!


 と、凄まじい音と風を伴い迫る剛腕。

 ゾンビマザーだ。


 奴は自らの腕をどのようにしてか、極度に肥大化させ——通常の人間の十数倍の大きさとなったそれで、エリゼへと横薙ぎの一撃を放ってきたのだ。


(……っ、速い!)


 だがしかし。

 これくらいならば十分に対処可能だ。


「剣技『一閃』!」


 と、エリゼは迫り来るゾンビマザーの巨大な腕目がけ、閃光の一撃を繰り出す。


 斬ッ!


 それはそんな音を立て、ゾンビマザーの巨大な腕を簡単に切り飛ばす……が。


「なっ!?」


 エリゼは思わず声を上げてしまう。

 その理由は簡単だ。


 なんと、切り飛ばしたゾンビマザーの腕が、瞬く間に再生——そのままの勢いでエリゼへと迫ってきたからだ。


 死。


 エリゼの脳内にそんなイメージがよぎる。

 どうすればいい。


(左右に躱しても当たる! 後ろに飛び退くのもダメ……前は避けるスペースがない!!)


 ならば答えは一つ。


 上だ。

 エリゼは両足に全力で力を込め、前身を続けていた身体を無理やり止める。

 そしてそのまま、勢いよく真上へと飛び上がり、天井へと着地。


 直後。

 エリゼの直ぐそばを通り抜ける、ゾンビマザーの剛腕。

 当たったていたら、エリゼの直観通り即死だったに違いない……けれどこの通り、奴は外した。

 要するに。


「あは♪ 隙だらけよ、お前!」


 言って、エリゼはレベル10の力を再び全開放。天井を爆散させ、ちょうど真下にいるゾンビマザーへと突撃。


 落下する勢い。

 疾駆の勢い。

 それら二つにエリゼはさらに——。


「剣技『一閃』!!」


 全力の剣撃の勢いを載せる。

 間違いなく渾身の一撃。


 そして、その一撃は間違いなくゾンビマザーを頭から真っ二つに両断することに成功する。


(手応えありよ!)


 と考えながらも、エリゼは大きな音を立てて床へとなんとか着地。

 彼女はすぐさまゾンビマザーから距離を取り。


「これで駄目押しよ……攻撃魔法『ファイア』!」


 直後、エリゼの手から放たれたのは火球。

 エリゼのレベル上昇に伴い巨大化したそれは、凄まじい速度でゾンビマザーへと直撃し。


 ドゴォォオオオオオオッ!!


 猛烈な爆炎の中に、両断されたゾンビマザーの姿を消し去るのだった。

 

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