第四十八話 エリゼと王

「ソフィア様が乱心だ!!」


「犯罪者を逃したというし、いったいどうして……」


「知るか! とにかくいそげ! ソフィア様が民を扇動している!!」


 と、聞こえてくるのは兵士たちの声。

 同時、エリゼが隠れている場所の前を慌ただしい様子で駆けていくのは二十数人ほどの兵士たちだ。


 さてさて。

 時刻は作戦会議の翌日、夜。

 場所はセントポール——王が住まう家のすぐ側の木陰。


「ソフィアとクレハは想定以上に頑張ってくれたみたいね」


 ぶっちゃけさっき、王の家から出て行った兵——エリゼが思っていた以上の数だった。


(物語に出てくる王が住む『お城』ってやつよりは、この家は遥かに小さいわ)


 それでも、あの量の兵士を収容する場所くらいはあったに違いない。

 まぁ、地下牢があるくらいだ。


(それくらいあっても、おかしくはないわね)


 などなど。

 エリゼはそんなことを考えたのち、ガラ空きになっている正面入り口から王の家へと入っていくのだった。


 ……。

 …………。

 ………………。


 そうしてさらに時は進んで現在。

 エリゼは王の家の中を進んでいるのだが。


(兵士があれだけ出て行ったから、ある意味あたり前なのだけれど……本当にガラ空きね)


 地上は人間の兵。

 地下はゾンビの兵。


 というように、王は使い分けているに違いない。

 となると。


(ゾンビが夜中に地上を出回っていたのは、王の命令で『地上の人間をさらってゾンビにし、地下のゾンビ兵力を増やす』って狙いがあったとか……かしらね)


 あと残る疑問点は三つだ。


 ソフィアの父である『本物の王』はどこにいるのか。

 どうして今いる王は『エリゼを狙ったのか』。

 どうして今いる王は『エリゼの魔法について知っていたのか』。


 特に最前者が一番の問題だ。

 エリゼはソフィアのために、なんとしても王を見つけてあげたい。


 まぁあれだ。

 どれも直接本人に聞けば問題ない。


 ガチャッ。


 と、エリゼは扉を開いて玉座の間へと入っていく。

 そして、彼女はそこにいる人物——王へと言うのだった。


「ただいま、今帰ったわ。随分と色々やってくれたわね……私にも、ソフィアにも」

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