第四十七話 エリゼと作戦会議

 時はエリゼが気絶した翌日——昼。

 場所は変わらずセントポート外れにある墓地。 


「ん……エリゼ、体調は本当に大丈夫?」


「昨日はとっても心配したんだ!」


 と、順に言ってくるのはソフィアとクレハだ。

 エリゼはそんな二人へと言う。


「ええ、大丈夫よ。昨日はある意味しっかりと寝れたから、もう完全に魔法の副作用である頭痛が消えたわ」


 それに朝一番で、エリゼは自らに回復魔法『ヒール』を使っていた。

 そのため、身体も完全回復と言っていい。


 さてさて。

 というわけで、エリゼはソフィアとクレハへと言う。


「というわけでさっそく、作戦会議についてだけれど」


「ん……ドキドキ」


「わくわく、だ!」


 と、期待に満ち溢れた様子のソフィアとクレハ。

 エリゼはそんな二人へと言葉をつづける。


「私が王の元へ突っ込むわ」


「……」


「……」


「あら……ソフィアもクレハも、どうして黙っているのかしら?」


「ん……そんなの作戦じゃない」


「そうだ! 一人で突撃するなんて、いくらなんでも危険すぎるぞ!」


「あ〜、ごめんなさい……言葉が足りなかったわね。別に何の作戦も立てずに、王の元まで一人で突っ込むというわけではないわ」


「?」


「それじゃあいったい、どういうことなんだ?」


 言って、ひょこりと首を傾げてくるソフィアとクレハ。

 エリゼはそんな二人へと、自らの作戦について語っていく。

 それをまとめるとこんな感じだ。


 まずエリゼが王の元まで突っ込む。

 これはもうこれ以上でも以下でもない。

 けれど、ソフィアとクレハには、エリゼのサポートをしてもらう。

 その方法とはずばり——。


 騒ぎを起こす。


 王の娘であるソフィアが、声を大にしてこの街に起きていること——さらにはエリゼと王の間で起きたことの全てを、街中に暴露してもらう。

 クレハはそのサポートだ。


 無論、ソフィアがエリゼの逃走を助けたというのは、今頃王にバレているに違いない。

 となると、すでにソフィアは『敵に寝返った』などと流布している可能性が高い。

 だがそれでもだ。


(多かれ少なかれ混乱は起きるはず)


 なんせソフィアはこの人柄だ。

 確実に彼女を頭から否定する人などいない。

 少しは話を聞くはずなのだ。


「ん……そうなったら、兵士たちがあたし達のところへやってくる。そうして王(仮)の守りを薄くしたところに」


「エリゼが突っ込むんだな!」


 と言ってくるのはソフィアとエリゼだ。

 要するにそういうことだ。

 エリゼはさらにそんな二人へと言う。


「作戦決行は明日の夜よ」


 本当ならばゾンビ化の件があるため、今すぐにでも王の元へ行きたいところ。

 だがしかし、この街にゾンビマザーが居ると仮定した場合。


(ゾンビマザーは地下水路で出会った、騎士甲冑のゾンビよりも強いはず)


 だとしたら、念入りすぎるほどの準備が必要に違いない。

 などと、エリゼはそんなことを考えたのち、その準備を開始するのだった。

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