第四十五話 エリゼと脱出完了②

 時はあれなら少しのち——深夜近く。

 場所は変わらずセントポート外れにある墓地。


 エリゼとソフィア、そしてクレハは三人で互いに互いの意見を交わしていた。

 その結果。


「ん……パパがゾンビマザーと入れ替わってるのは、あたしも可能性があると思う」


「クレハもそう思う! そんなにいきなり人が変わるなんて、いくらなんでもおかしいぞ!!」


 と、順に行ってくるのはソフィアとクレハだ。

 エリゼも自分で思い至った考えながら、これはかなりありそうだとは思う。


 となると問題は、いったいいつから王がゾンビマザーと入れ替わっていたのかだ。

 もっとも、こちらもだいたい想像がつく。


(一人で部屋に篭っていた時でしょうね)


 その時に王の身に何かがあった。

 ゾンビマザーから接触があったのか、はたまた王がゾンビマザーに対し接触したのか。


(たしかソフィアは言っていたわね。この国は『帝国といざこざ』があるって)


 もしもその帝国とやらが、それほどに大きな国だとしたら。

 言ってはなんだが、セントポートなど一瞬で飲み込まれてしまうに違いない。

 そしてさらに。


「……」


 と、エリゼは自身の手をみる。

 考えるのは特殊魔法『触手』についてだ。


(この力は言ってればモンスターの力……モンスターの力は凄まじい力を秘めているわ。それこそ、人間なんて歯牙にも掛けないほどの)


 王はゾンビの力を手にしようしたのではないか。


 それを使って、帝国からセントポートを守ろうとした。

 けれど、ゾンビの力を制御できずに失敗。

 現在に至る。


 つじつまは合う。


(ゾンビマザーこらアクセスがあったのか、王側からアクセスしたのかは不明だけれど、それは現状問題ではないわね)


 まぁ気になることが一つあるとすればあれだ。

『帝国といざこざが起きた』というタイミングで、そう都合よくコンタクトの取れるモンスターと遭遇出来たのが不自然だ。


 そもそもモンスターは、人間を食糧としか見ていないだけでなく、想定のできない動きをする災害のようなものなのだから。


(ひょっとすると、このゾンビ騒ぎ事態が帝国の……いえ、さすがにそれは考えすぎね)


 なんにせよだ。

 ソフィアのためを思うなら、今することは一つだ。

 

 などなど。

 エリゼはそんなことを考えたのち、ソフィアへと言う。


「私が回復したら、事実を確認しがてら王様(偽)の元に行きたいのだけれど……」


「あたしも一緒に行く! でも……ん、確認ってどうするんだ?」


「とりあえず王様(偽)を締め上げるわ。そして本当の王様の居場所を聞き出す。あれが本当にゾンビマザーなら、そのまま倒せば全て解決よ」


「っ! エリゼ……頭いい!」


 と、キラキラとした瞳で見つめてきてくれるソフィア。

 けれど先の作戦には大きな問題がある。


(強引に突破するか、隠密で潜入しないと王のところに行くのは厳しいでしょうね)


 いずれにしろ突発的な戦闘は確実にある。

 そしてもし、王の配下にまだ『地下水路で出会った騎士甲冑クラスのゾンビ』が居るのなら、なかなかに厳しいに違いない。


 と、ここでエリゼはとあることに思い至る。

 それは。


(そういえば、地下水路での戦闘でレベルが上がったかまだ確認していなかったわね)

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