第二十八話 エリゼは到着してみる

 時はあれから数時間後、夕方。

 現在、エリゼとクレハは——。


「すごい、なんて大きな街なの……ここがクレハの居た街なのね?」


 と、エリゼは思わず言ってしまう。

 するとクレハはエリゼへと言ってくる。


「そうだ! ここがクレハの街——セントポートだ! すごいだろ!!」


「ええ、街を囲う城壁もすごい大きさだし、門もものすごい大きさ……」


「えっへん!」


 と、胸を逸らすクレハ。

 彼女はそのままエリゼへと言ってくる。


「それじゃあさっそく中に入れてもらおう! もうすぐ夜になるし、早く入った方がいいんだ!」


「そうね。あと一応気になっていたのだけど、泊まる場所は——」


「この街にあるクレハの家だ!」


「……本当にいいのかしら?」


「クレハは一人暮らしだから問題ないぞ! クレハにお任せだ!!」


 と、自らの胸を叩くクレハ。

 彼女はその後、元気よく門へと近づいていく。

 そして、彼女は大きな声で——。


「お〜い!! クレハだ! クレハが帰ったんだ! この門を開けてくれ〜!」


 するとしばらくした後。

 ゆっくりと音を立てて開く門。

 そして。


「本当にクレハだぞ!」


「モンスターにやられたんじゃなかったのか!?」


「というか、後ろのあの女は誰だ?」


 と、聞こえてくるのは門からこちらを覗く住民達の声だ。

 エリゼは彼らをみて思う。


(剣で武装してる? 兵士ってところよね、あの人たち……珍しいわね)


 なんせ、何度も言うようにモンスターは不老不死。

 あらゆる攻撃を受け付けないからだ。

 となれば当然、剣などは意味がない。


(でもそうね、この街の規模なら兵士が居てもおかしくないかも)


 だって、人と人は争うものだ。

 エリゼの町と異なり、この規模ならば犯罪などが起きる可能性も高い。

 そうなった時のための兵士だ。


(そうなると、クレハのスキル『刀剣創造』はすごく重宝されたでしょうね)


 などなど。

 エリゼがそんなことを考えていると。


「こいつはエリゼだ! クレハの命の恩人で、とってもいい奴なんだぞ!」


 と、聞こえてくるのはクレハの声。

 見れば、クレハが身振り手振りで住民達へ、エリゼのことを説明してくれている。

 すると。


「お前がクレハを……ありがとな!」


「おう、俺たちの仲間をよく助けてくれた!」


「あ、そうだ! 歓迎会しようぜ歓迎会!!」


「酒場でみんなで歓迎会か!? いいねぇ!」


「でもよ、あんま夜には出歩かない方が——街の中とはいえ、例の件があるしよ」


「はぁ!? あんなん噂だろ!? たいしたことねぇよ!」


「そうそう! それじゃあ今から酒場で歓迎会だ!」


 と、なにやらとんとん拍子で話が進んでいる様子。

 エリゼとしてはここまで歩いてきて疲れているのだ、ぶっちゃけさっさと休みたい……けれど。


(悪くない気分なのよね。私、こんなに多くの人から感謝されたの初めてだし)


 断りたいけど断りたくない。

 二律背反とは、こういうことを言うに違いない。


 さてどうするか。

 こう言う時は——。


 と、エリゼはクレハをチラリとみる。

 すると。


「歓迎会! クレハもしたい! エリゼを歓迎するんだ!!」


 と、ウキウキな様子のクレハ。

 なるほど、となれば。


(方針は決まったわね)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る