第十九話 エリゼは復讐してみる
時は町長達がスライムマザーの元へ向かった少しあと。
場所は町の門の上——見張り台。
「ぷっ……く、あは——あはははははははははははははははははははははっ♪」
と、エリゼは思わず吹き出してしまう。
もう我慢の限界だ。
お腹痛い。
「ほんっと、信じられない! あいつら、どうして私の言ってることを全部信じるのよ♪」
本当に信じられない。
頭の中身が詰まってないのだろうか。
などなど。
エリゼはそんことを考えたのち、前方へと視線をやる。
するとそこに広がっているのは。
「あぎゃっ!?」
「ぐがががががががかががががっ」
「ひぃいいいいいい!!」
「た、助け——ぶびっ」
阿鼻叫喚。
スライムマザーに蹂躙されている住民たちだ。
住民たちの何人かは、きっと怪我をしパニックに陥った人を逃がそうとしているに違いない——『モンスターを殺せる武器(笑)』で、必死に戦っている。
けれど意味はない。
だってあの剣、クレハに意図的に折れやすく作らせた、ただのクソ武器なのだから。
「あは♪ また一人死んだ!」
ほんっともうこれ。
絶景。
下腹部が火照ってきているのがわかる。
キュンキュンとした何かが、突き上げてくる。
ここに来て、エリゼはようやく理解する。
自分の正体を。
「私、人が苦しんでる姿を見るのが大好きなんだ……私に酷いことした人ならなおさら♪」
いつか自己紹介をする日が来たら、胸を張ってこう言うことに今決めた。
趣味:復讐
好きなこと:嫌いな人が苦しむ姿を見ること
将来の夢:自分にとっての楽園を作る
「あぁ……今日はなんて素晴らしい日なのかしら♪」
晴れ渡った空。
肌に感じる気持ちのいい風。
そして耳に聞こえてくる断末魔。
「〜〜〜〜〜♪」
と、エリゼは見張り台の手すりにもたれかかり目を閉じる。
そして、心地いい時間に身を任していると——。
「だ、誰か開けろ! 俺を助けろぉおおおおおおお!!」
と、聞こえてくる耳障りな雑音。
エリゼは手すりから下を覗く。
するとそこに居たのは——。
「え、エリゼ! たす、助けてくれ! 剣が変で……お、俺は! 俺は!!」
町長だ!
町長だ町長だ!!
エリゼは思わず少し前の自分を殺したくなる。
だって、耳障りな声なんて失礼すぎる。
「あは♪ メインディッシュのご到着、ね」
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