第十七話 町長は最強になったので無双してみる

 時はあれから少しのち。

 場所は町の外——門から少し離れた位置。


 現在、町長は住人を率い、スライムマザーからやや離れた位置に陣取っていた。

 そしてその手に握られているのは。


(くくくっ! この剣さえあれば俺は無敵だ!!)


 エリゼのような無能でも、この剣を持った途端あれほど身体能力があがり、モンスターを倒しまくっていた……ならば。


(俺や俺の住民達がこの剣を使えば、スライムマザーを倒すどころじゃない! 別の町に襲撃を仕掛け、乗っ取ることだって可能だ!)


 エリゼはさっさと殺してしまおう。

 あいつは邪魔だ。


(たしかクレハと言ったか……あの女がこの『モンスターを殺せる剣』を作り出せるらしいしな)


 エリゼを生かしておく必要性を感じない。

 そもそもだ。


(せっかく殺さず追放で済ましてやったのに、ノコノコ戻ってきやがって! しかも俺たちを助けていい気になってるのか、指図しやがって)


 現在の作戦。

 森側からやってきているという、スライムの別働隊をエリゼが止めている間に。

 町長達のグループがスライムマザーを倒す。


 これもエリゼによるものだ。

 非常事態だから従ってやっているが、本来ならばあり得ない。


(俺に指図していいのは俺だけなんだよ!!)


 殺す。

 偉そうな奴は絶対に殺す。


 だから町長はかつて、エリゼの両親も暗殺したのだ。


 次はエリゼの番だ。

 スライムマザーを殺したら、すぐにでも——。


(そうだ! すぐに殺すことはない! 犯しまくってやる! 村の男全員の子供を孕ませて——)


「町長!」


 と、町長の思考を断ち切るように聞こえてくる声。

 見れば、住人の一人がすぐそばに駆け寄ってい来ていた。

 彼は町長へとさらに言葉を続けてくる。


「準備完了しました! いつでも行けますよ!」


「よし! これで全員、『モンスターを殺せる武器』で武装できたわけだな」


「はい!」


 となれば後は号令を出すだけだ。

 エリゼを痛ぶるという楽しみが待っていることだ。

 スライムマザー戦という消化試合、さっさと済ませてしまおう。


 などなど。

 町長はそんなことを考えたのち、住人達へと言うのだった。


「突撃ぃいいいいいいいっ!!」

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