第十五話 エリゼの帰還②
結論から言おう。
町の中は阿鼻叫喚だった。
「助けてくれ!」
「い、家が! 俺の家が燃えてる!!」
「痛い、痛いぃいいいいいいいいい!!」
と、至るところで聞こえて来る住民の声。
あるところではスライムに襲われ。
またある所ではきっとスライムに対抗しよして火でも使ったに違いない——家が盛大に燃えている。
(あ、あれ……私に最初に石をぶつけた奴の家だわ)
ものすごく綺麗だ。
だがしかし。
(あの家、周りの家と離れているから、燃え広がらないのが残念ね)
などなど。
エリゼがそんなことを考えた。
まさにその瞬間。
「ぐぉああああああああ!! あ、足! 足がぁあああああああ!!」
と、聞こえてくる悲鳴。
エリゼが声が聞こえてきた方を見ると、はたしてそこに居たのは——。
「あは♪ 町長、スライムに足を食べられてる!」
と、エリゼは思わず幸せな気分になってしまう。
けれどダメだ。
このまま死なれては、いくらなんでもヌルすぎる。
エリゼの目的はこの町への復讐。
当然、その中には町長への復讐も入っている。
いやそれ以前に一般住民もそうだ。
(そうよ! 何を幸せな気分になっているのエリゼ!? 今はそんな場合じゃないわ!!)
スライムに襲われ、絶望の中死亡?
そんなヌルい死に方は許せない。
助けなければ!
もっと酷い死に方をさせるために!!
考えたのち、エリゼは町長のもとへと全力で駆け出す。
そして。
斬ッ!
と、すれ違いざまに町長の足にまとわりついていたスライムを斬り裂く。
そしてすぐさま。
「『ヒール』!!」
「お、お前はエリゼ!? どうしてここに……な、なんだこれは!? 足の怪我が治って——いやそれより、今モンスターを倒して……!?」
と、エリゼに対して色々パニックになっているに違いない町長。
エリゼはそんな彼へと言う。
「隅っこで隠れていていて! みんなは私が守るから!!」
「し、しかし俺たちはお前を追放して——」
「そんなこと言ってる場合!? 気にしてないから、早く隠れて——できるなら、他の人も連れて!」
「っ…….エリゼ、後でお礼をさせてくれ!」
言って、駆け出していく町長。
エリゼはそんな彼の背中を見ながら、一人呟く。
「あら、別にお礼はいいわよ……勝手にあなた達の絶望と、そして命を貰うから」
そして、エリゼは唐突に閃く。
最高の復讐を。
すなわち。
上げて落とす作戦。
この町の住民に希望を与えまくってから、絶望の淵に落として鏖殺するのだ。
問題はその方法だが。
「スラァ!」
「スララァ!」
と、至るところから聞こえてくるスライムの声。
見える限りでも、十数体のスライムが確認できる。
(復讐方法を考えてる場合じゃないわね。考えている間に、復讐対象がどんどん私以外のやつに殺されていってしまったら……)
エリゼは単なる間抜けになってしまう。
となれば。
「さて、一仕事しますか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます