第十四話 エリゼの帰還

 そうして少し後。

 現在、エリゼとクレハは件の町の側へとやってきていた。


 戻るにはなかなか大きな森を抜けねばならず、それなりに苦労した。

 なんせ方向がよくわからなかったからだ。

 けれど、とある理由によりそれはすぐに解決した——その理由とは。


「すっごい燃えてるわね」


 と、そんなエリゼの視線の先。

 そこにあるのは懐かしきも恨めしい故郷だ。

 その町はモクモクとドス黒い煙をあげている。


 目を凝らすと、壁の一部が破壊されているのがわかる。

 要するにモンスターが侵入したのだ。


「エリゼ、急用ってあれか!? あの町を助けるんだな!」


 と、言ってくるクレハ。

 エリゼはそんな彼女へと言う。


「まぁ……そうね。本質的には違うけれど、とりあえずは助けることになるわね」


 モンスターをどうにかしないと、町の住民への復讐どころではないのだから。

 そんなことを考えたのち、エリゼはクレハへとさらに言う。


「もうしわけないのだけど、もう一本剣を作ってくれるかしら?」


「もうしわけなくなんてない! クレハにお任せだ!!」


 言って、すぐさま剣を作り出してくれるクレハ。

 エリゼはそんな彼女から、剣を受け取ったのち言う。


「それじゃあ、私は町に行くわ。クレハは周囲を警戒しつつここで待っていて。でも、もしもこっちにモンスターが来たら私の方まで逃げてきて」


「わかったぞ! なるべく気配を消して警戒してる! 行ってらっしゃいだ、エリゼ!」


「行ってくるわ」


 直後、エリゼは地面を蹴り付け町へと疾走する。

 身体が恐ろしく軽い。

 両手にそれぞれ剣を一本ずつ持っているとは思えない身軽さだ。


(これがレベル5の力……これなら負ける気がしない!)


 などと考えている間にも、どんどん近づいてくる町の門。

 すると。


「っ!」


 門の外。

 目視できる限りで八体のスライム。


 スキル『狩猟』を持たず、モンスターを倒せない人間からすれば脅威の数だ。

 しかしそれを持ち、レベル5の身体能力を持つエリゼにとっては大した敵ではない。


(まずはこいつらから殺す!)


 と、エリゼは両手の剣を構える。

 そして彼女はスライムが間合いに入ったと同時。


 斬ッ!


 と、両手の剣をそれぞれ一閃。

 すれ違いざまに二匹のスライムを斬り裂く。


「スラァ!」


「スラ、スララァ!」


 と、エリゼの方へと向き直ってくる他のスライムたち。

 だが圧倒的に遅い。


「はっ!」


 と、エリゼはスライムが本格的に動くよりも先に、両手の剣を投げる。


 するとそれらは凄まじい速度で回転しながら、エリゼからやや離れた場所にいるスライムへと突き刺さる。

 直後。


 パシャ。

 パシャシャッ。


 と、液体に変わるスライム二体。

 これでここまでで倒したスライムの合計は四体。


「スラッ!」


「スララァ、スラァ!」


 と、怒った様子でエリゼへと向かってくるスライム四体。

 当然、奴らはすでに攻撃態勢に入っている。

 さらにエリゼには現在武器がない。


 けれどこれでいいのだ。

 エリゼはあらかじめこうなることを予想して、これまでの戦闘をコントロールしていたのだから。


(今ここで試す!)


 考えたのち、エリゼは両手をスライム四体へとかざす。

 そして……。


「『ファイア』!」


 同時、エリゼの両手からそれぞれ放たれたのは火球。

 それらは猛烈な速度でスライムめがけ突き進み。


 スライムにぶつかった瞬間。

 大きく爆ぜる。

 それによって巻き起こった爆炎は、瞬く間にスライム四体を飲み込んでいき。


「思ったよりも威力があるわね、これ」


 そんなエリゼの前に、スライムはもはや存在していなかった。

 さて。


「あとは町の中のモンスターの駆除をしないと」


 言って、エリゼは2本の剣を拾ったのち、町の中へと入っていくのだった。

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