第十三話 エリゼは仲間ができる

 洞窟を出ると、すっかり外は明るくなっている。

 もっとも、この二日間エリゼは寝ていたので、その言い方もおかしい気はするが。

 などと、エリゼがそんなことを考えていると。


「エリゼ、急いでどこに行くんだ!?」


 と、エリゼのあとを追いかけてきたのはクレハだ。

 彼女はエリゼへとさらに言葉を続けてくる。


「もう身体は大丈夫なのか!? エリゼはクレハを助けてくれたから、クレハはエリゼのことが心配なんだ!」


「身体はもう大丈夫。さっきの質問だけど、ちょっと急用ができたのよ。完全に私用——というか私怨だから、クレハはついて来なくても大丈夫よ」


「クレハもついていく!」


「でも外はモンスターだらけよ? 洞窟でバリケードをはっていた方が——」


「クレハはエリゼと違ってモンスターを倒せない! だから、万が一バリケードが破られたら殺されちゃうんだ! だったら、モンスターだらけでもエリゼと一緒にいた方が安全だ!」


 たしかにそんなクレハの言葉は一理ある。

 などとエリゼが考えていると。


「それにクレハはエリゼに恩返ししたいんだ! さっき助けてくれたからな!」


 と、言ってくるクレハ。

 彼女はスキル『刀剣創造』で長剣を作り出すと、それをエリゼに渡しながら言ってくる。


「武器だ! これエリゼにあげるぞ! 今後ももし武器が必要になったら、クレハに言え! エリゼのためならいくらでも作ってあげるぞ!」


「……いいの?」


「いいぞ! さっきも言ったけど、ゴブリンから助けてくれた恩返しだ!」


「そう、ありがとうクレハ」


 言って、エリゼはクレハの頭を撫でる。

 すると。


「〜〜♪」


 と、気持ちよさそうにするクレハ。

 まずい、なんだか可愛い。

 変な趣味に目覚めてしまいそうだ。

 

 これ以上はやばい。

 エリゼは気を紛らわすためにも、クレハへと言う。


「そ、それはそうと……私の私用に付き合ってくれるのなら、私もあなたにお返しをしないとね」


「?」


「私の私用が終わったら、あなたをあなたの街に送り届けてあげるわ」


「本当か!?」


「えぇ。こんな立派な剣ももらってしまったしね」


「わーい♪ それじゃあエリゼは仲間だ! とっても優しい友達で、仲間なんだ!」


「友達……」


「そう、友達だ!」


 言って、エリゼへと抱きついてくるクレハ。

 ぶっちゃけ、エリゼは友達など要らないと思っていた。


 これまでエリゼの周りには、友達になりたいと思えるやつなど居なかったからだ。

 しかし。


(悪くない気分、ね)


 むしろ心地いい。

 エリゼはクレハの顔を見て思う。


(この友達は大切にしよう)


 そして。

 そんなことを考えたのち、エリゼはクレハに抱きつかれたまま町——かつて追放された場所へと向かうのだった。

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