第十一話 エリゼは助けてみる

 ゴブリンは全滅した。

 左足が痛むが、エリゼにはまだすることがある。

 それは。


「あなた、大丈夫?」


 言って、エリゼは縛られ転がされている少女のもとへと、足を引きずりながら歩いていく。

 そしてエリゼは足の痛みから、崩れ落ちるように少女の横へとしゃがみ込み。


「今自由にしてあげるわ」


 シュルシュル。

 と、エリゼは少女の手足を縛っている縄を解いていく……すると。


「あ、ありがとう……だぞ」


 と、やや警戒した様子で起き上がり、エリゼへと言ってくる少女。

 エリゼはそんな彼女へと言う。


「そんなに怯えなくて大丈夫よ。私はあなたの敵じゃないもの」

 

「お、怯えてないぞ! クレハは別におまえを怖がったりしてないんだ!!」


「そう、クレハって名前なのね?」


「あ、ぅぅ……っ」


「私はエリゼ。よろしくね?」


 と、エリゼはクレハへと手を伸ばす。

 するとクレハはエリゼの手をおずおずとした様子で握り返し、そのまま言葉を続けてくる。


「よ、よろしく……その、エリゼは本当にクレハの敵じゃない、のか?」


「ほら、やっぱり怖がっているじゃない」


「怖がってなんてないぞ!」


「別にいいのよ、怖がっても。私もゴブリンに襲われて、すごい怖い思いをついさっきしたばかりだもの」


「……そんな怖い思いをしたのに、どうしてエリゼはクレハを助けてくれたんだ?」


「別に、たいした理由じゃないわ。ただの自己満足よ」


 と、エリザは言ってから気がつく。

 自己満足で足にこんな怪我を負っていてはせわない。

 なんだか恥ずかしくなってきた。

 故にエリゼは話を逸らすためにも、クレハへと言う。


「それで、どうしてあなたはこんなところにいるの? 攫われてきたのは察しがつくけれど……」


「採取クエストの途中で油断して、モンスターに襲われたんだ!」


「クエスト?」


「エリゼはクエストを知らないのか?」


 と、言ってくるクレハ。

 そんな彼女はエリゼへと説明をしてくれる。

 それをまとめるとこんな感じだ。


 なんでもクレハはとても大きな街に住んでいたらしい。

 そこでは冒険者ギルドというものがあり、クエストという仕事?みたいなものを発行しているそうなのだ。


(この時代、町同士の交流はほぼほぼ断絶してるから、場所によって本当に文化か違うわね)


 にしてもだ。

 エリゼは目の前で今も、身振り手振り込みで話してくるクレハを見て思う。


(心を一度開くと、かなり懐っこいわね……この子)


 ここまで懐っこくされると、エリゼとしてもだいぶ気持ちいい。

 というか、助けてよかったと思える。


(クレハみたいな友達が、あの町にも居てくれたら……私が追放された時に庇ってくれたり、したの…….かし、ら)


 と、ここでエリゼは異常に気がつく。

 何かおかしいのだ。


(あ、れ? 身体が、うまく……意識、も——っ、まさか、毒?)


 なんだが地面がすぐ近くにある。

 クレハが心配した様子で何かを言っている。

 けれど、エリゼの意識はそのまま闇に落ちていくのだった。

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