第九話 予期せぬ出会い

 先ほど聞こえてきた人の声。

 あれからエリゼはなるべく音を立てない様に、けれどなるべく急いで洞窟の奥——件の声が聞こえてきた方へと進んでいた。


「い、や……嫌だ! 触るな!」


 と、今度こそ聞こえて来る少女の声。

 エリゼはさらに先へと進み、洞窟の曲がり角になっている部分から、その先を覗き見る。

 するとそこにあったのは。


「ゲゲ!」


「ギギ!」


「やめろ! クレハに触るな、このっ!!」


 五体のゴブリン。

 そして、そんな奴らに囲まれた黒髪ミディアムショートの少女だ。

 どこかの学院の制服に、胸当てをつけたような格好……そんな彼女は手足を縛られ、地面に転がされている。

 しかも。


「グゲゲゲッ!」


 と、そんなゴブリン達によって、今にも服を剥ぎ取られようとしている。


 エリゼはその様子を見て、二つのことを瞬時に理解した。


 一つ、あの少女はエリゼとは違い、どこかの町からゴブリンに連れ去れてきたに違いない。


 二つ、この洞窟——ここまで来るのに、ゴブリンが一匹しかいなかった理由だ。

 きっと、入り口近くにいたゴブリンは見張りだったのだ。この五匹のゴブリンが、少女を痛ぶっている間の。


 などなど。

 エリゼがそんなことを考えている間にも。


「ゲヘ、グゲゲゲッ!」


 と、一気のゴブリンが少女に覆いかぶさり、下半身のモノを大きく膨らませている。

 きっと先ほどのゴブリンが、エリゼにしようとしていたことを、この少女にしようとしているに違いない。


(相手は五匹、このまま戦ったら私が不利に決まってる。それに助ける義理もないし、ここは退いたほうがいいのもわかってる……けど)


 見たところ少女はエリゼと同年齢くらいだ。

 そんな少女を見捨てるのは、気持ちのいいものではない。

 だってこの少女はエリゼに対し、まだ何もしていない——要するに敵ではないのだ。


(それに今退くということは、せっかく見つけたこの洞窟を諦めるということになる……そんなの)


 嫌だ。


 と、エリゼは地面を強く蹴り付け、一気にゴブリン五匹の前へと身を躍らせるのだった。

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