第六話 復讐の前の下拵え

「えいっ!」


 と、エリゼは目の前のスライムを枝で叩く。

 すると、ビシャッと液体に変わるスライム。


 現在。

 エリゼは当面の住処を探す過程で、モンスター数体と遭遇していた。

 そして、先ほど倒したスライムで六体目なわけなが。


「やった! レベルが3になってる!! やっぱりモンスターを倒すとレベルは上がるのね!」


 けれど、レベル2から3に上がるのに、1から2に上げるよりも多くの討伐数が必要だった。


「何でかしら? やっぱりモンスターによって、レベルが上がる効率が違う? それとも、レベルは上げる毎に上がりづらくなる……もしくはその両方?」


 などなど。

 エリゼがそんなことを考えていると。


「?」


 少し離れたところで何か聞こえた気がした。

 何の音かは判別できなかった。

 しかし。


(ひょっとしたら川が流れる音かも!)


 今、エリゼは猛烈に喉が渇いている。

 そしてそのことを改めて思い出すと、もう我慢は出来なかった。


「っ!」


 気がつくと、エリゼは走り出していた。

 走って走って。

 しばらくすると見えてきたのは。


「そん、な……」


 見えてきたのは洞窟だった。

 だがしかし。


「今、聞こえた!」


 たしかに水が流れる音がする。

 洞窟の中からで間違いない。


(地底湖か滝か何かわからないけど、この洞窟の中に水源がある!)


 それに考えてみると、この洞窟は好立地に違いない。

 なんせ住処に持ってこいだ。


 例えば中の安全を確認したのち、入口に扉のようなものを作ればどうだ。

 即席の家の完成だ。


(問題は中の敵、よね? 洞窟なら洞窟由来のモンスターがいるはず)


 本で読んだことがあるのはケイブバットだ。

 生き物の血を吸い、毒を持っている危険な敵。

 かつて襲来したケイブバット五匹に、大きな街が滅ぼされた話も聞いたことがある。


(レベル3ってどうなんだろう。今の私なら倒せるのかな? そもそもスライムと昆虫モンスター、それとケイブバットのヒエラルキーがわからない)


 エリゼは力を手に入れた。

 しかし、まだ戦闘経験が浅い。

 そのため食物連鎖における自分の位置を判断しかねているのだ。


(でも、このチャンスを逃したら水も家も手に入らないかもしれない)


 それにもしケイブバットを倒せれば、もっともっとレベルを上げられるに違いない。


「そうだ、行こう……私はこんなところで止まったりなんてしない」


 まずは強くなる。

 そして町の奴らに復讐する。

 奴らを町から逆に追い出してやろう。

 そして。


「あの町を私の拠点にして、あそこを足がかりに作っていくんだ」


 このモンスターに支配された世界に。

 エリゼが幸せにすごせる楽園を。

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