第三話 モンスターを倒せる唯一の存在
「はっ、はっ、は……っ」
と、エリゼは全力で走る。
いったいどれほど走ったのか、気がつけば彼女は見慣れぬ森の中に居た。
(身体、痛い……肺もっ)
きっとここまでの最中、枝などに引っ掛けたに違いない。
エリゼの体は細かい傷だらけになっていた。
しかし。
「っ……ここまで逃げれば、スライムも——」
振り返った瞬間、エリゼの言葉は止まる。
その理由は簡単だ。
「スラァ!」
と、元気にぴょこぴょこ跳ねているスライム。
そう、エリゼはスライムを振り切れてなどいなかったのだ。
「う、そ……」
と、エリゼは思わずその場にへたり込んでしまう。
もう無理だ。
スライムはモンスターの中でも最弱。
けれど人間にとっては脅威だ。
だって不老不死なのだから。
スライムが一体でも町の中に入れば、なんとかして外に出すために甚大な被害が出る。
男は殺され、女は犯されることすらあるのだ。
とてもエリゼが一人でどうにかなる敵ではない。
そして、彼女はそのことを意識した瞬間。
「や……いや! 来ないで!!」
と、エリゼは近くにあった枝を拾い、スライムに向けてかざす。
けれど、スライムはまったく気にした様子はない……それどころか。
ビキ。
ビキビキッ。
と、スライムの一部が太く長い棒を形成し始める。それはまるで男性の下半身に付いているもののようで——。
「スラァ!」
と、聞こえてくるスライムの声。
同時、スライムはエリゼへと飛びかかってくる。
「嫌ぁ!!」
エリゼは持っていた木の枝を突き出す。
そして、彼女は自分に降りかかるに違いない、最悪の未来から目を逸らすため目を閉じる。
……。
…………。
………………。
「?」
と、エリゼは脳裏に疑問符を浮かべる。
いつまで経っても、想像していた感覚が襲っていこないからだ。
なにかおかしい。
エリゼは恐怖を押し殺し、なんとかゆっくりと目を開ける。
すると見えてきたのは。
「あ、れ……スライムが、居ない?」
そんなエリゼの周囲にあるのは、スライムと同じ色をした謎の液体のみ。
そして、エリゼの手に握られ、同様の液体がまとわりついた木の枝だけがあるのだった。
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