小さな妖精さんと癒しの時間
その日はメグと会える日だったが、私はとても疲れていた。
連日の仕事の疲れもあるが、私生活でも役所の手続きなどで
バタバタした毎日だった。
メグには悪いと思ったが、遊びに行ける体力はない。
そのことを彼女に連絡すると、今日も家に行くよと返答があった。
『このところ忙しそうだったものね…お見舞い?とはちょっと違うけど
少しだけお家いってもいい?ちょっとしてげたい事があるんだ。』
そうメールの返信があり少しごろごろしているとピンポーンとインターホンが
鳴った。
彼女が来たらしい。
私が鍵を開ける前に妖精のドアが開き、おじゃましますと入ってくる。
「あ~本当に疲れた顔してる。大丈夫…じゃないよね?
あ、着替えたりとかしなくていいよ。今日はそういう日にしちゃおう。」
メグはしっかりお洒落してきているので気が引けてしまったが、お言葉に甘えさせてもらう。
着替えるのも面倒くさいのだ。
「そういう日もあるよ。こういう飾らない姿もこれから一杯見れたら嬉しいな」
せめてものおもてなしでオレンジジュースを注いであげる。
お茶請けにはビスケット(人間サイズ)を1枚。
彼女は果汁がたっぷりじゃないオレンジジュースが好きだ。
「ありがとう。でも今日は私が色々と癒してあげましょうと思いまして…。
妖精の秘術ってヤツを見せてあげようかなと。ふっふっふっ」
妖精の秘術…この前のカレーの時のようなのだろうか。
あの味が忘れられなくてメグにしばしばカレーを作ってもらっている。
あの粉、近くじゃどこにも売ってないんだよ…。
「いや、そんな怯えないでよ。今日はこれを試したくて来ました」
そういうと鞄から円柱の木の筒のようなものを取り出した。
はて?なんだろうか?
「よくぞ聞いてくれました。フェアリー・ジャベリン伸びろっ!」
メグが叫ぶのは、この前いっしょに見たロボットアニメの影響だろう。
たぶんきっと深い意味はない。
威勢よく叫んだわりには完成に手間取っている。
「ここをこうして止めて…反対側からこう出して…完成!
今からこの耳かきであなたを癒してさしあげます。」
この前、私の耳が弱いと知って雑貨屋さんで買ってきたらしい。
本来は妖精が悪戯に使う用だが、メグは真面目にやってくれるという。
「じゃあ、横になって、ね。」
言われるがまま右耳が上になるように横になる。
彼女は洞窟に探検に行くようなライトを頭につける。
キラキラと瑠璃色の羽を静かにはばたかせて彼女がごそごそと耳かきを始めた。
「ゴソゴソ、ゴソゴソ…おお、よく見える。意外と綺麗かも。
もっとお宝ザクザクかと思ってた。どう?気持ちいい?」
少しこそばゆいが、これは確かに気持ちいいかもしれない。
普段は元気な彼女だが、今日は耳元にいるので声のボリュームを抑えてくれている。
「彼女なんだから、本当は膝枕とかできればいいんだけど…。でもこうやって妖精に耳かきしてもらうのってあまりないでしょう?適材適所ってやつです。」
取れた耳垢は水の魔法で綺麗に丸めている。
終わった後に流して捨てるだけなので楽だと考えたようだ。
水球がちょろちょろと音を立てるのもなんだか癒される。
「次はこっちについてるふわふわで…こしょこしょ..」
耳かきの反対側の部分、梵天と呼ばれる所をゴソゴソと入れてくる
ふわふわの感覚とくすぐったい感覚と時折、夢中になってるメグの足が頬に
当たるのもなんだか気持ちがよい。
今日の彼女は素足だった。
「えー?なぁに?足でされるのが好きなの?うふふ」
ちょっと小悪魔チックに囁いてくる。
「いいよ。じゃあ少しだけ。ふみふみ」
私の耳たぶを足で挟んでふみふみしてくる。
なんだかいけない事をしているようだ。
足の裏の感覚が耳に伝わってくる
「じゃあ最後の仕上げ。お耳に…」
ふーっと息をかけてくる。
たまらず変な声が出てしまった。
「そうそう、その顔が見たかったの。可愛い。じゃあ反対向いて」
今日はいつになく攻め攻めのメグちゃんである。
そんな感じで左耳も同じようにごそごそ、ふわふわ、ふみふみ、ふーふーと犯されてしまった。くすん。
「あ、ごめんなさい。ちょっとやりすぎちゃったかな?あなたの反応が良すぎてつい…ど、どうだった?」
とても癒された…と思う。
ちょっと過激であったが。
それでも彼女が自分で考えて、こうして私に尽くしてくれるのがなによりも嬉しかった。
「よかった。ちょっと疲れちゃったかな?ごめんね。今日はこれからもっとゆっくりしよう。食べたいもの食べて、好きなこともして、たくさん寝ちゃおう。
あなたがいつも頑張ってるの知ってるからね」
私の隣にいてくれる妖精は今日も、そしてこれからも最高のパートナーだ。
小さな妖精の大きな愛 良行 @R-kikaku
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