小さな妖精さんとお菓子を食べよう

ご飯が終わって食後のコーヒーをいただいている。

メグはというとさっき買ってきたお菓子を取り出してモグモグ食べていた。

彼女が食べているのはミルククリームをパリパリの薄いワッフル生地で

包んだお菓子で、昔から人気のある商品だ。

人間用のを買ったので彼女が持つとバスケットボールを持つくらいの

サイズ感がある。実に幸せそうに食べていて見ていて飽きない。


「人間のお菓子はやっぱり美味しいね。私たちのも甘くて美味しいのあるけど

花の蜜とか果物とかそういうのになっちゃって。悪くないんだけど…

もっと罪深い味というか砂糖!というのが私は好き。」


私としては妖精の作るお菓子も気になると言うと、じゃあ今度それも作ってあげると

いう事になった。花の蜜と木の実と果物でで作る蒸しパンみたいなものらしい。

なにそれ美味しいそう。さっきのカレーの時のような感動がまたあるかもしれない。

やはりサイズがすごく小さくなるらしいが、甘いものをそんなに食べて

太ったり病気になったりするのも怖いので丁度よいだろう。

そういえば妖精が人間のお菓子を食べて大丈夫だろうか?


「大丈夫だと思うよ。私たちって空飛んでるでしょう?

それってすごくカロリー使うから、なるべく食べた方がいいらしいし。人間の食べ物を食べるようになってから平均寿命が延びたっていうのも聞いたことがある。

あんまり太った妖精って見ないかなぁ。」


自然に愛されている妖精たちだったが、それ故に自然の摂理と共に生活をしていた。

病気になっても治す術がほとんどなく、栄養も肉や魚も食べない地方もあった。

100年ほど前まで妖精の平均寿命は30歳ほどだったらしい。

人類から医学と栄養学がもたらされた現在では、私たちとそこまで寿命は変わらない。

妖精たちからは魔法の力、人間からは科学の力を共有する。我々は共存できる生き物なのだ。


「そんなことより、私ばかりお菓子食べてて食いしん坊みたいだからあなたも食べて!美味しいけどさすがに一人じゃ食べきれない。お口あけて。ほら、あーんってしてあげる。」


ほっぺたにクリームつけながらそんな事言われても食いしん坊キャラは撤回できないと思うが…怒られそうなので言わないでいた。

ちょっと恥ずかしいが、彼女に食べさせてもらう。

メグはひらひらと私の前まで飛んできて、お菓子をひょいと一つ口に放り込む。

なんだか遊園地にある口にボールを入れると景品がもらえるやつになった気分だ。

うん、甘くて美味しいしコーヒーにもよく合う。

子供の頃は無限に食べれると思っていたお菓子も大人になると少しでいいなと感じてしまう。


「せっかくだからここで食べていい?私、そんなに重くないと思うけど…重かったら言ってね。」


そういうと彼女は私の肩に腰かけた。実際に軽い彼女なので、問題ないと伝える。

彼女に机の上のお菓子を一つ袋からとってあげると、またモグモグと食べ始めた。

なんというか小動物っぽくて可愛い。リスとかハムスターとかそういう。

そんな彼女が耳元で硬いワッフルの皮をパリパリと食べる音が心地よい。

咀嚼音はダメな人もいるが、私はメグのだったら許せると感じた。


「あなたが飲んでるそれってコーヒーだよね。私は苦いの苦手だから飲めないんだけど…あとカフェイン?あれが強すぎるもの私どうにもダメで…」


私の肩でパリパリもぐもぐしながらメグが私のカップの中身を覗いてくる。

人間でもカフェインは苦手な人はいるからなぁ。

ノンカフェインのコーヒーに砂糖やミルクたくさんなものではどうだろうか。

それはもう違う飲み物な気もするけども。タンポポコーヒーとか。


「タンポポコーヒ?そういうのもあるんだ。今度ためしてみようかな。

ん?どうしてなんかもじもじしてる?」


肩に乗ったメグが話す度に息が耳に当たって少しくすぐったい。

そういうと彼女はニヤリと笑い、私の耳にふーっと息をかけた。

びっくりしてコーヒーこぼしそうになった。


「あはは、ごめんなさい。あなたって耳が弱いんだね。いいこと知っちゃった。

これは色々なことができそう。

うん、ちょっといいこと思いついたかも。今はナイショね。」


どうやら私は彼女にまだまだ振り回されてしまいそうだ。

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