小さな妖精さんとお買い物

「うーん…どれにしようかな?」

今日は妖精マーガレットことメグが私の部屋に遊びに来る日、彼女は悩んでいた。


私に料理を作ってくれると彼女は言った。

どこで聞いたのか「まずはあなたの胃袋を掴みたい!」というので了解をした。

賃貸アパートに妖精用の設備も整えたので彼女の感想も聞きたかった。


お昼より少し前に部屋に家を出てスーパーマーケットで待ち合わせをする。

ほどなくしてキラキラと瑠璃色の羽をなびかせてメグが到着。

金髪のショートヘアに春らしい桃色のワンピースが似合っている。

この瑠璃色の羽は彼女の自慢らしく、私も素敵だと思う。

今日も綺麗で可愛いと彼女に言うと私の周りをくるくると飛びながら喜んだ。


そして冒頭の材料の買い出しである。メグは「私でも持てるよ!」と言い張ったが買い物かごは私が持った。魔法を使うから大丈夫らしいが、私の世間体があまりよろしくない。

そのことを言うとメグはなにがおかしいのかケラケラ笑った。


妖精は人間よりかなり小さい。身長が約30cmなので人間の1/5ほどだろうか。

それでも彼女は一生懸命にキラキラと売り場を飛びながら野菜を選んでいた。


「玉ねぎ、にんじん、ジャガイモ…うーん、人間用サイズだと全てが大きいから脳がバグる。私はあんまり食べれないから2人前くらいでもいいかな。足りないならまた作ってあげればいいし。

あなたはなにか嫌いな食べ物あったりする?」


特に好き嫌いはないのでそう伝える。そういえば肉とか魚とかはメグは大丈夫なのだろうか?


「お肉とかはね、私は大丈夫。なんか森の奥とかに住んでる人は未だにお肉とか食べないってのもあるみたい。美味しいのにね。今日は鶏肉でいいかな?200gってやっぱ大きいね。」


「ああ、あと今日は材料にアレを持ってきてるんだ。ちょっとしたサプライズだから楽しみに待っててね。フフフ」


ここで言ってしまったらサプライズではないのでは?とも思ったが、口には出さない。

いたずら好きな妖精もいるらしいがメグなら悪いようにはしないだろう。優しい子だ。



それにしても今日の妖精メグは浮かれている。パタパタ、キラキラとスーパーマーケットを右往左往に楽しそうにと飛行する。

途中でお菓子をかごに入れるのも忘れずに。


「でっかいお菓子もあなたとシェアすればいいものね。お菓子も人間用サイズって一人じゃ食べきれないからこういうの

憧れてたんだ。」


お会計に進む。料理は作ってもらうので代金はこちらで持つことにした。

それを言うと「割り勘でいいか?」と最近見た特撮映画のセリフをメグが言って

ちょっと面白い。


ちなみにレジも含め文明の機器は妖精も使えるようになっている。

そもそも身長差のために人間と同じ硬貨や紙幣が持ち運べないので、魔法の力のパーソナルデータを使用した電子決済のようなシステムになってるらしい…。らしいと言うのは私も詳しくないからだ。彼女たちの魔法には個を認識できる…人間でいえば指紋のようなものがあって、それを応用している…らしい。

つまり今の時代の妖精は、人間社会においても人間と同等のサービスが受けられる。

便利な時代だ。


私の家に向かう途中もメグはご機嫌である。なにがそんなに嬉しいのかと聞くと

「そんなのあなたに会えるだけでも嬉しいんだよ。人間側に来れるのも楽しいし。まぁ人間は私たちより体が大きいから時間の感覚が違うのかもしれないね。

それに頻繁に会えないのも仕方ないのだけど…」


メグとは恋人同士といえるが、彼女はまだ未成年なので同棲なんてのはできていない。

妖精と人間の生きる世界と種族の壁もある。

そのあたりはゆっくり事を進めればいいと思っている。


「そうだね。ゆっくり愛を深めましょう。とりあえず今日は美味しいごはん作るからね。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る