コント「天国と地獄」
場面 なんだか白っぽい空間
俺 ツッコミ 高校一年生の男子
天使 ボケ 金髪碧眼の残念な美少女
天使『あの、わかります?』
俺「え? ここ、どこ? おれ、芝生でサボって昼寝していたのに」
天使『あの、意識あります?』
俺「あ、はい、え?! 美少女、まるで、天使だ」
天使『あ、はい、天使です』
俺「へ? うわ、羽がある! え、何で? 俺? 死んだの?」
天使『はい、仮死状態ですが』
俺「へ?」
天使『校庭からボールが飛んできて、起き上がったあなたの後頭部にガッツリ、ぶつかって』
俺「いや今日の体育はサッカーだろ? 普通、サッカーボールじゃ死なないだろ?」
天使『いや当たった勢いであなたが寝ていた芝生の土手から転げ落ちて、下の道路に頭からまっ逆さまに。で、即死、と』
俺「それ死因ボールじゃないし」
天使『で予定外なので、今仮死状態です』
俺「予定外? 俺、死ななくて良かった、とか?」
天使『ま、そういうことになります、ね?』
俺「そうだ、俺、お前の姿見て、ビックリして起き上がったんだ」
天使『あ、やっぱり見えてました?」
俺「見えてた」
天使『実はヨモヤマゴザエモンさん88歳が、米寿のお一人様バースデーパーティーでイチゴショートのイチゴ飲み込んで窒息して孤独死することになってたんで、お迎え行く途中だったんですよ』
俺「おめでたいんだか、悲しいんだか」
天使『で、急いでいて低空飛行しちゃって。ま、空も混んでて』
俺「空に道ないだろ」
天使『ホントは寝坊しました』
俺「言い訳かよ」
天使『昨日遅くまでゲームしてたら明け方になってて』
俺「廃ゲーマーかよ」
天使『まだそこまでいってないです。で、まあ、不慮の事故というか、こちらにも多少の落ち度もありますし』
俺「いや、全面的に落ち度だろ?」
天使『で、あなたを蘇生してあげてもいいかな、と』
俺「何で上から目線なの?」
天使『いつも上から見てるので』
俺「物理的なことじゃなくて。で、生き返せるのか?」
天使『生き返すだけなら』
俺「え?」
天使『実はこのまま蘇生しても後遺症残っちゃうんですよ』
俺「はあ? 元に戻してくれないの?」
天使『私に出来るのは「魂を運ばない」っていう、消極的対応だけなんで。完全治癒とか、時間戻すとか、社長、じゃない、神様の権限ないと無理なんで』
俺「じゃ、頼めよ」
天使『そうすると、こっそり処理とかできなくて、報告書必須になっちゃうんで。これ以上減点されると、査定に響くんですよね』
俺「それって隠蔽?」
天使『そうとも言います』
俺「それは隠蔽だろ!」
天使『あ、何もなくても、あなたの人生……成績不良で引きこもり40歳目前に自宅を追い出され、生活苦で餓死、となっていますんで」
俺「マジ?」
天使『どちらにします? ヒッキー孤独死にしますか? 大ケガ後遺症にしますか?』
俺「そんな、ポテトにしますか、ナゲットにしますか、みたいに言われても。どっちもマジ、ツラいんだけど」
天使『それがあなたの人生です』
俺「いやいや、半分はアンタのせいだよね? これって、出るとこ出て訴えたら勝ち、とか?」
天使『いや、それだけは。わかりました。あきらめて始末書書きます』
俺「報告書じゃなくて始末書って自分で言っちゃってるし。うん、始末書を書いて、元に戻してくれ。今なら、まだやり直せる気がする」
天使『分かりました。はあ、この冬のボーナスは無しか。新しいバッグ欲しかったのにな』
(暗転)
天使『いやあ、お久しぶりです。家族に看取られ享年85歳。大往生ですね』
俺「また、アンタがお迎えか」
天使『あの減点以来、ずっと現場で平ですよ』
俺「それは悪かったな。でも、おかげでいい人生だった」
天使『それは何より。でも』
俺「なんだ?」
天使『あのまま蘇生していた場合、奇跡的に回復し、自叙伝が、バズって一躍時の人に』
俺「だから?」
天使『ちょっとした意趣返しです。でも、響いてませんね』
俺「俺は、自分で選んだ人生に満足しているよ。アンタのおかげだ」
天使『スミマセン』
俺「へ?」
天使『順風満帆に見えた人生、でも、すぐに忘れられ藁にもすがる思いで投資に飛びつき失敗、莫大な負債を抱えて、家族とは別居、最期は孤独死、でした』
俺「そうか」
天使『やっぱり、自分の人生は、自分で責任を持たないとダメなんですね。あのあと、ミスを隠蔽して昇格していた同僚は、バレて免職されて地獄行きになりました。隠蔽が理由で』
俺「誠実なのが一番さ、人間も、天使も」
天使『そうですね。さあ、逝きましょうか。死者1名さま、天国にご案内。あ、禁煙席ご希望ですか?』
俺「ファミレスか!」
シチュエーションボイス フリー台本集 清見こうじ @nikoutako
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。シチュエーションボイス フリー台本集の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます