第9話ペンクラブパーティー

ある日の日曜日。とあるホテルにてペンクラブ会員のパーティーが開かれた。

そこに、ペンクラブ会員の正樹は友人のめぐみを連れて参加した。

始めは、会長の挨拶。続いて本年度ペンクラブ大賞を受賞したペンネームがブリュヴェールさんの挨拶があった。受賞した作品名は、

「あなたとトイレットペーパー」だった。

一通り挨拶が終わると、パーティーが開かれた。

正樹は瓶ビール、めぐみはハイボールを飲みながら、テーブルに置かれた、鯛の刺し身を頬張った。

「やぁ、西くん」

正樹が振り向くと、

「あ、羽弦先生」

「西くんの今回の作品は良かったよ。次回は本気で大賞を狙うといい。あれ、この女性は奥さん?初めまして、会員の羽弦トリスです」

めぐみは、緊張して、

「は、初めまして。小森めぐみともうします。先生とお会い出来て光栄です。直木賞

受賞作の『愛のムチでしばいて』は、素晴らしい作品でした」

「めぐみさん、気を使いなさんな。今日は思いっきり飲んで帰ってね」

「ありがとうございます」

「あっちの同人誌には、若い男の子が多いから」

「羽弦先生、お気遣いありがとうございます。実は、小森さんの彼氏候補を探しにきたのです」

正樹は先生に正直に、あれこれ全てを話した。


「小森さん、なんなら私が紹介しよう。歳は40だが若々しくて面白い男がいる。次期、芥川賞作家と呼び声高いヤツだ。さっ、こっち」

正樹とめぐみは、先生の後を付いて行った。

そこには、かなりのイケメンの男が1人テーブルで泡盛を飲んでいた。

「さっ、彼に声を掛けなさい。ヒロサカ君だ。ヒロサカリュウイチ君」

めぐみは、先生と正樹に背中を押され、ヒロサカのテーブルに近寄った。

「あ、あのう、ヒロサカさんですか?」

ヒロサカは、唐揚げを口に入れて泡盛をストレートで流し込んだ。

「ど、どなた?」

「あ、小森と申します。小森めぐみです」

「キミ、泡盛飲むかい?」

「是非」


正樹と羽弦は、

「正樹くん、あれは手応えありだ。ヒロサカ君は滅多に女性と話さない」

「酔ってるからでしょうか?」

「彼は嗅覚が鋭い。普通じゃない人間が好みなんだ。我々はあっちのテーブルで飲もうじゃないか」

「はい」

2人は、めぐみを遠巻きに見守りながら酒を飲んだ。


「めぐみさんは、会員かい?」

「いいえ、友人が会員なので付いてきました。でも、小説は大好きで、いつか会員になろうと検討中です」

ヒロサカはめぐみのグラスに泡盛を注ぎ、乾杯した。

2人は文学論で盛り上がった。

「最近の作家は、マーケティングするんだよ。僕はいただけないね。流行りものに手を出すなんて」

「そう、ですね。羽弦先生の作品みたいな小説が好きです。友人の正樹が羨ましいです」「正樹君って、西正樹の事か?」

「はい。どうされました?」

「西さんは、羽弦先生と仲が良くて羨ましい。同じ、高校の先輩後輩だろ?」

「じゃ、あっちに先生がいらっしゃいますよ」

「い、いや、いいんだ。キミと話しているのが楽しいんだ。この後の予定は?」

「何にもありません」

「僕と飲みに行かないかい?初対面だから、西さん達も誘えば問題ないでしょ?」

「はい。そうします。ちょっと、先生と正樹君に聞いてきます」

恋愛は交通事故と同じ。いつ、どこで起きるか分からない。

それは、誰かが言っていた。

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