第7話めぐみの恋

正樹は腕時計を見た。18:05。今日は1時間残業した。会社側は残業はあまりして欲しくないのだが、現場は現場の都合がある。

会社の利益を上げているのは、総務課課長ではなく、現場の人間のお陰だ。

そう言う、総務課も残業しているではないか?

正樹は、めぐみと田山に声を掛け、残りの仕事は明日に回すと言い、会社を後にした。

3人はタイムカードを切ると18:35と印字された。

田山は子供の為に、そそくさと帰っていった。

「めぐみ、一杯どうだ?」

と、正樹が言うと、

「私も同じ事、言おうとしてた」

めぐみはなんだか、正樹に話したいことがあるらしい。

2人は馬刺しが上手い、居酒屋夜明けに向かった。

生ビールで乾杯した。

早速、馬刺しをニンニクたっぷり乗せて食した。

明日、仕事でも遠慮無くニンニクを食らう正樹を見て、めぐみもニンニクを馬刺しに乗せた。


今宵は、日本酒で攻めてみた。

甘く飲みやすい。地元の酒蔵の酒だ。

ひと息付くと、めぐみが正樹に聞いた。

「経理の溝口さんってどんな人?」

正樹は、また恋しやがったなと思いながら、

「溝口直人、38歳。趣味はフットサル。彼女なし。女癖が悪い男だよ!」

めぐみは冷酒をごくりと飲むと、

「女癖が悪いのかぁ。カッコよかったのに……」

「あいつには、手を出すな」

「週末、溝口さんも呼んで飲もうよ!」

「ダメ、ダメ。あいつは好かん」

「キャプテンお願い!そこをなんとか!」

「一回だけだぞ。キズ付くのは、お前だからな」

「溝口さん、私がトランスジェンダーってしってるの?」

「もちろん、会社全員知ってるよ。ジェンダー問題については、定期的に研修があるし」

「あ、ありがとう。ここ、私が払う」

「まだ、8時だが最近飲み過ぎだから、今夜はここまで。溝口には声を掛けておくよ」

2人は家路についた。

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