第5話ビアガーデン

「いずみ~、今日はビアガーデンに行くから帰り遅くなる」

「知ってるー。朝までには帰って来てね」

正樹の妻・いずみはハイハイといつものやり取りなので別に咎めはしない。

平日は割りと早く帰宅して、子供の健太の面倒をよくみているし、稼ぎも十分なのでお小遣いの範囲で週末だけ飲みに行く夫に、嫌な顔は出来ない。

自身も健太が小学校に行っている時間帯には、女子会に参加しているのだから。

2人は高校生時代からの付き合い。

お互いに性格を知り尽くしている。

正樹のプライベートは充実している。


「今日もあっちーな。田山、かき氷。」

10時の休憩に、正樹は若き後輩の田山に銭を渡してかき氷を買って来てもらった。

めぐみと3人で、木陰でかき氷を食べた。夏の休憩時はこれに限る。

「主任、今日は楽しみにしてました。3人でビアガーデンに行く事が出来るなんて」

田山が、かき氷を口にしながら喋る。

「よく、奥さんが許したな?」

「はい、たまにはいいよ!って言われてきました。朝までに帰ればいいそうです」

「オレんちと一緒。オレも朝までにって言われてきた」

「いいなぁ、2人とも。家族がいて」

「めぐみ、君にはいつか良い彼氏ができるさ。な?田山」

「そうっスよ!出会いは必ずあります」

「あ、そうだ、めぐみはまだ文章に興味あるかい?」

「何?急に」

「ペンクラブに入らないかい?出会いがあるよ!じいさんだらけだけど、中には若い作家もいるよ」

「ま、考えとく」

「いいだろう。今日は目標3時だ。あと300台チェックすれば、ずらかろうぜ」

「主任、大丈夫ですか?」

「何が?」

「何が?じゃなくて、3時あがりは怖いです」

「大丈夫。うちの課の大久保課長はオレの後輩。文句は言わないよ!」

「主任、謎が多すぎます。ビアガーデンでめぐみさんに主任の学生時代の話しを聞きたいっスよ!」

めぐみはニコリとして、

「田山君。私が主任の全てを教えてあげる」


3人は3時過ぎには、仕事を終えて最初にめぐみがシャワーを浴びて、髪を乾かす間に、正樹と田山がシャワーを浴びた。

「田山、お前のでっけーな。コリャ一発妊娠だわ」

「主任だって……」

「やーだー、見ないで。勃起しちゃう」

「アハハハ」

3人は汗を流し、会社の裏口から脱出して、田山がビアガーデンを案内した。

会社から意外と近かった。

3人は各々飲みたいビールをセルフでビールサーバーからジョッキに注いできて乾杯した。

つまみは、ジンギスカンである。

正樹は黒ビールを飲みながら、2人の話を聴いていた。

「主任って、どんな学生だったんスか?」

田山はノーマルの生ビールを飲みながらめぐみの話を聴いた。

「正樹君はスッゴいエッチな学生でね。学校のどこでも、彼女とセックスしていたの」

めぐみは、自作のハーフアンドハーフを飲みながら熱く語る。

「学校でセックス?」

「うん。セックス。正樹君は青姦が大好きで、公園でよくセックスしてたのを私はよく見かけたわ」

「へぇ~、西さんがセックス狂いとは」

正樹は、肉を食いながらニヤニヤしていた。

「正樹君は股間にペットボトルを挟んで見栄を張ったのよ」

「おいおい、あれはヒロちゃんだ!」

「そうだっけ?」

「主任は何部だったんスか?」

「弓道部だよ。オレと、めぐみは弓道部。これから、たぶん一緒に飲むことがあるかも知れないヒロちゃんも弓道部」

そういうと、既に5杯目の黒ビールを注ぎに席を立った。

時間制限90分がアッと言う間に過ぎ、3人はビアガーデンを後にした。

「正樹君、この後どうする?まだ、5時だよ!」

「よし、今度はオレが御用達のビアガーデンだ!「紅葉園」と言ってサッポロビールの店だ。つまみは、焼き肉もあるが刺し身で一杯どうだ?」

「いいともー」

めぐみははしゃいでいる。

紅葉園では、人生の先輩である、めぐみがトランスジェンダーについて田山に講義していた。

田山は真剣に聴いていた。

気付けば7時半。時間だ。紅葉園を後にした。

さて、三軒目。

今回はめぐみが店を案内した。

店は川魚料理専門店「竹中」であった。

既にデキあがった3人は竹中へ吸い込まれた。



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