第4話元カレ尋問
正樹と広樹の前に、めぐみの元カレが座敷に座った。その隣にめぐみは座る。
「初めまして、西正樹さん、犬飼広樹さん。めぐみさんとお付き合いしていた、甲斐俊介と申しましす。お土産をどうぞ」
と、俊介は2人に紙袋を渡した。
「そこまで、気を遣わなくていいのに。ありがとう、甲斐君」
「わっ、キャプテンこれ、マッカランだ」
俊介はニコリとして、
「お二人とも、ウイスキーが好きだとめぐみさんから聞いていたので」
正樹と広樹は、丁重にお礼を言って、早速甲斐俊介の尋問を開始した。
「甲斐君、君は一度めぐみを捨て、他の女の子に走ったそうじゃないか。何故だ?」
俊介は、
「若気の至りです。理由なんかありません」
ヒロは正樹の表情を見ながらヒヤヒヤした。確実に正樹は怒っている。
「じゃ、何故、もう一度、めぐみと付き合いたいのか?」
甲斐は、生ビールを飲みながら、口に枝豆を入れて
「離れて気付いたんです。やっぱり、僕にはめぐみさんが必要だと」
「そうか。理由は分かった。今の仕事は?」
「ガードマンです」
「正社員?」
「バイトです」
「甲斐君よ。キミはバイトでめぐみを食わせて行けるのか?」
「はい。めぐみさんが西さんのお陰で再就職出来て、正社員なので何とかやっていけるんじゃないっスか?」
正樹はキレる寸前だ。
「キャプテン、一度休憩しよう。そうだ、タバコ吸いに行こう」
広樹ことヒロは、正樹を外に連れ出した。
「何だ、あのクソガキは?舐めてやがる。他力本願だよ。アイツ、めぐみが正社員になったのを知り、ヒモになるつもりだよ!ガマン出来ん。東京へ追い返そう!」
ヒロはタバコに火をつけようとしたが、ライターのガスが切れている。正樹はヒロのタバコに火をつけてやった。
「オレたちバカにされてるよ!マッカランをお土産に機嫌を取ろうとするなんざ。キャプテン、もう少ししゃべったらキレていいよ!」
正樹は灰皿にタバコを押し付けると店内に向かおうとしたが、
「キャプテン待って!まだ、タバコ吸い始めたばかりだから」
「あぁ、悪い」
めぐみと俊介は2人でビールを飲んでいた。
「何だ、あのオッサン。マッカラン代返してもらいてえよ。昔通りに、オレはめぐみに食わせてもらうんだ。いいよな?めぐみ」
めぐみは、目付きを変えた。
「俊介、もう少し考えて。もう、あなたを食べさせる気はないから。今の言葉、正樹君に言うわよ」
「勝手にすれば~。オレが丸め込んでやる」
「あなたには無理よ」
正樹とヒロが店内に戻ってきた。
「甲斐君は、めぐみがトランスジェンダーだと言う事を理解しているよね?」
「はい。恋愛に性別は関係ありません」
「君は、正社員のめぐみの給料を狙っているんだよね?」
「ち、違います」
「実は、バッグにこんなものを隠していてねぇ」
正樹はバッグの中から盗聴器を見せた。
「マッカランがなんだって?てめぇ、こんな安酒いるかっ!」
正樹は俊介にマッカランを返した同じくヒロも。
「き、汚えぞオッサン」
「なんなら、力ずくでオレ達からめぐみを奪ってみろ」
俊介は、筋肉質な正樹のガタイを見て、
「オレたちは、愛しあってんだ。な、めぐみ。こんなオッサンらにつべこべ言われる筋合いはねえよ」
「俊介、帰って!正樹君とヒロ君は私の親友なの。親友を悪く言う人とは付き合えない」
めぐみは、目を真っ赤にして言い放った。
「さ、今から東京へ帰れ!」
「そうだ、そうだ、帰りやがれ」
俊介は泣き出しそうな顔をして店を出て行った。
「これで、もう甲斐君の事、忘れられるだろ?」
「うん」
「今日は土曜日出勤だったから、月曜日は休みな?」
「うん」
「じゃ、キャプテン、めぐみ、もう一軒行こう。あ、アイツ、マッカラン忘れてる」
「今夜の講習代だ。もらっておこう」
3人はバーに向かった。
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