第3話めぐみの元カレ

とうとう、めぐみの元カレと会う日が訪れた。

田山も英文をめぐみから教えてもらい、書類を筆記体で書くようになった。

この書類はキズとオーディオ類が付いているかの説明文なので、車の絵にどこがScratch(擦り傷)しているか、Dent(へこみ)しているか、Accident car(事故車)なのか分かれば良いのだ。

正樹が安物のG-SHOCKを見ると、10:05を表示していた。

正樹はめぐみと田山に、休憩しようと言って、暑い夏の味方のかき氷を買ってくるように、田山にゼニを渡した。

田山がいなくなると、

「めぐみ、何、考え事?」

めぐみが冴えないし、仕事が遅いからだ、

「うん」

「今夜の元カレの事か?」

「うん」

「悪いけど、ダメなヤツならオレとヒロちゃんが東京に追い返すからな!」

「あ、ありがとう。でも、心配」

「めぐみ、いい加減にしろっ!ダメな男は君には似合わない。もっと冷静に。な?」

「分かった。主任と広樹君に全てを任せたよ」


「いんや~、暑いッスね。はい、イチゴ味は西さん、宇治抹茶はめぐみさん、僕はブルーハワイ」

3人は木陰でかき氷を食べた。

「西さん。うちの子供が掴まり立ちをしたんです」

「おぉ、でかした。かわいいだろ?」

「はい」

「産まれたのはいつだっけ?去年の冬ッス」

「早いか遅いか分からないけど、おめでとう」

「西さん。今度、この3人でビアガーデン行きませんか?」

「オレはOKだよ!めぐみは?」

「是非」

「じゃ、来週末で」

「分かった」

3人は一先ずかき氷を食べた。


この日は、ちょうど5時に終了した。正樹は会社のシャワールームで汗を流した。

そしていつも通りのスラックスとシャツに着替えて、めぐみはジーンズにTシャツだった。

2人は真っ直ぐ、居酒屋千代に向かう。

入口付近で、

「キャプテン、めぐみちゃん」

ヒロは喫煙していた。正樹もタバコを一本取り出した。

「めぐみ、元カレは?」

「LINEで少し遅れるだって!」

「キャプテン、最悪な元カレですな」

「忙しいオレらがわざわざ場を設けたのに。ええい、先に飲んじゃえ」

正樹とヒロは入店したが、

「めぐみ、どうした?」

「私、俊介を外で待ってる。先に飲んでおいて」

「ま、ご自由に」

正樹とヒロは座敷室に座った。

「こんばんは、西さん、広樹さん」

「お、凛ちゃん。今日は、ばばあは?」

「階段でつまずき、右足首を捻挫して自宅にいます」

「お大事に。って伝えておいて。じゃ、生中二つお願い」

「ありがとうございます。では、お持ちしますねぇ」

2人はジョッキで乾杯した。

「生中はノーベル賞モンだな」

「まだ、元カレこないの?6時半だよ」

「きっと、来ないよ」


「キャプテン、ヒロ君お待たせ」

「遅かったじゃねえか?」

「初めまして。甲斐俊介かいしゅんすけと、申します。遅れてすいません。人身事故がありまして。すいません」

正樹は、

「事故ならしょうがない。さっ、座敷に上がって」

「はい」


こうして、めぐみの元カレへの尋問が始まるのだ。


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