「バスの外を走る忍者」
俺はバス通学だ。
徒歩で登校している友達からは、「お前は楽で良いよな」など言われる事もあるが実はそんなに楽でもない。
まぁ学校まで歩かなくて良いからそこは楽ではあるのだが、早朝のバスってのはいつも混んでいて狭い車内にぎゅうぎゅう詰めにされる。
席に座れるかどうかは運しだいで、大抵は入り口近くに立ち尽くしている。車内はよく揺れるので転ばないようにも注意しなくてはならないのだ。
そんなある日、偶然空いた席に座れて俺は本当の「楽」ができた。
その時俺は非常に気分が良かったので、車窓から景色を眺めあの定番の遊びを始めた。
バスの移動する速さに揃えて、窓の外に走る忍者を想像し、アクロバティックに動かす。と言うものだ。
俺は、三回ほど車の上に忍者を飛び移らせたところで目を疑った。
何故なら本当に忍者がいたのだから。
そして明らかに俺と目があっている。胸元から何か取り出したかと思うとこっちに向けてそれを勢いよく投げてきた。
運良く「それ」は外れて、すぐ見える位置のバスの外側の壁に刺さった。
普通に手裏剣だった。とにかく忍者が俺の命を狙っていることが分かった。
焦ってすぐに忍者の居ない道路を想像しようとするが、殺気の溢れた眼光に凝視され、手裏剣だかクナイだかを握り締められてては怖すぎて集中出来ないってもんだ。
2本目、3本目が投げられるが、今日の俺の運が良くて当たらない。
俺は一度冷静になって、忍者を車で引き殺して事故で消す方向に想像をシフトした。
するとたちまち忍者の対向車線からはみ出し運転のシルバー車が表れ、忍者の載っていた車ごと吹き飛ばしてくれた。
自分の命に関わる危険な想像はめったにするもんじゃないと、心に誓った。
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