瓦礫の下から

何もかも崩れ落ちて

幸せだった日々は遥か下に落っこちて

そこにあった生活は跡形もなく戦火が攫った

助けも来ない棄てられた土地


辺りに転がる瓦礫が痛々しく叫び

陥没した道路は重い空気に陥落し

青い空だけがいやに煩く

吹く風がそこに流れる時間をも攫い


忘れられた土地

果たせなかった夢の墓場

いつか誰かが流した涙の墓場

無音のさよならがこだまする街


そんな夥しい誰かの生活の瓦礫の下から

若葉が顔を覗かせていた

誰に見られるでもないその若葉は育ってく

それに呼応して次から次に若葉が芽を出してく


忘れられた土地に新しい命が芽吹いて

崩れ落ちた街に新しい物語が始まる

人々が消えたとしても時間は進む

進んだ分だけ終わりは遠のいて


そして瓦礫はいつか緑に染まって

誰かの果たせなかった夢が上書きされて

人類の跡地に新しい生物が育って過ごし

そうして時間は進んでく


いつか僕らはそんな世界を愛していた

いや「愛していた」と言うには嫌い過ぎた

腐れ縁と言うほど綺麗なもんでもない

だから僕らはそんな世界と戦い続けていた


その結末は言うまでもない

この世界は今日も綺麗だった

汚す人間どもが居なくなったから

ただひたすらに綺麗だった


これはいつか来る終わりの話

僕らは今その終焉に向かって走り続けている

遠い未来だと笑うかもしれないが

そう笑ってた人間が確かにいたのだ

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