わいはヒーローになれない

いつか誰かを救えると思ってた

自分みたいに独りで泣いてる誰かを

暗闇で前に進めないでいる誰かを

僕が好きだった誰かを

僕はこの手で救えるもんだと思ってた


僕は弱い人間だから

弱い人間だから言える言葉があると思ってて

誰かが塞いでる時、奮ってる時

そんな人の未来の幸運を祈って

「頑張れ」に変わる言葉を言ってきた


けど、結局のところ言葉は消耗品で

僕が放った言葉は明日の霧に掻き消えて

今日も鬱屈した誰かはうつむき加減で

さっきバスで笑ってたあの子は覚えちゃいない

言葉で自分は変えられるが、他人は変えられない


僕はヒーローにはなれない

起死回生の一撃は綺麗に空を斬って

容赦ない雑踏に踏みつけられて顔面は泥だらけ

「上手くいかねえや」も呟く気力もなく

暗く染る空を呆然と寝ころんで見てたのさ


「もし僕が出来た人間だったら」

「話上手だったら」なんてたらればは

今日だって満員列車で隣に座ってて

泣く事も諦めた目の下には隈が出来てる

僕には何にもない人間だと朝日が嘯く


それでも気がつけば今日も誰かに言葉をかけてた

嘘くさい薄っぺらいただの言葉さ

けど「好き」はいつまでも伝えられないって

僕自身が一番知ってるから

過ぎ去った人々の顔を思い浮かべる


僕はヒーローにはなれない

もし僕の言葉に救われた人間がいたのなら

それは僕のせいじゃない

変わろうと思って変わった君の勝利の功績だ

他の誰でも無い君のお陰なのだと


そういう僕は少しは変われたかな

きっと昔よりは良くはなったと思うけど

少なくとも誰かのヒーローになれずとも

いつか泣いてた誰かのヒーローにはなりてえな

最近そんなことを思ったよ


何もかも失ってく日々を生きてたいつかの君の

その未来が少しでも幸せなら救われるかな

そんな未来に手が届くとは今でも思えないけど

それでも「生きてみよう」って思える日々だから

それはそれで幸せなのかもな


午前四時薄ら明るいベッドの上で

あの日と同じようにそんな外を眺めてる

なんとも言えない朝の匂いがそう思い出させる

朝日は上がった

孤独前線に今日も立つ


勝つのはそんな僕だ

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